所信表明演説を行う高市早苗首相(1月20日、写真:REX/アフロ)
はじめに
衆院選で自民党が歴史的大勝を収めたことで、高市早苗首相は政権基盤の強化に成功し、首相が意欲を示す政策を推進する大きな力を得た。
「インテリジェンス機能の強化」もその一つである。
高市氏はインテリジェンスの強化が持論で、国家情報局の設置を総裁選公約に掲げていた。日本維新の会も推進の立場で、自民党と維新が2025年10月20日に結んだ連立政権合意書にも創設方針が盛り込まれている。
連立政権合意書の中の「インテリジェンス政策」の要点は次のとおり。
●2026年通常国会において、内閣情報調査室および内閣情報官を格上げし、「国家情報局」および「国家情報局長」を創設する。
●2027年度末までに独立した対外情報庁(仮称)を創設する。
●インテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法およびロビー活動公開法など)について速やかに検討を開始し、速やかに法案を策定し成立させる。
さて、自民党は2025年10月30日、「インテリジェンス戦略本部」を新設した。党インテリジェンス戦略本部(本部長・小林鷹之政務調査会長)は11月14日に初会合を開催した。
小林氏はまず、「国益を守り、国家の安全を確保するためにはインテリジェンスに関する国家機能の強化が急務」と語った。
その上で、「この本部では司令塔機能の強化、対外情報収集能力の抜本的強化、そして外国からの干渉を防ぎ、国内の安全を確保する体制の構築という3つを、中期的なビジョンを持って議論していく」と、国民の命を守るためのインテリジェンス機能強化に向けた議論を行う同本部の意義を強調した。
我が国の戦前の情報活動には非合法の情報収集(諜報)や秘密工作(謀略)が含まれていた。戦後の情報活動では合法的な情報収集しか認められていない。
諜報や謀略については拙稿「高市首相主導で動き出した日本のインテリジェンス」(2025年11月7日)を参照されたい。
過去にも、インテリジェンス機能強化の動きがあった。
例えば、1985年に「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」(略称:スパイ防止法案)が衆議院に提出されたが廃案となった。
また、2005年に外務省が設置した「対外情報機能強化に関する懇談会」は、政府に対して英国のMI6(正式名称はSecret Intelligence Service:秘密情報機関)のような対外情報活動機関の創設を提言したが、日の目を見なかった。
そして今、我が国が、長い間、見て見ぬふりをしてきたインテリジェンス機能強化にやっと取り組むことになったことは、長年日本の安全保障にかかわってきた者として喜ばしいことである。
筆者は、戦後早い時期に、我が国に英国のMI5のような防諜機関やMI6のような対外情報機関が整備されており、かつスパイ防止法が制定されていたならば、オウム・サリン事件や北朝鮮の拉致事件が起きていなかったのではないかと思っている。
ところで、本稿では、筆者が「インテリジェンス機能の強化」の課題と考える次の6項目について私見を述べてみたい。
①インテリジェンスの定義
②スパイ防止法の制定
③犯罪捜査のための通信傍受要件の緩和
④英国のMI5のような専門の防諜組織の創設
⑤英国のMI6のような専門の対外情報機関の創設
⑥インテリジェンス機関の活動を監視するシステムの構築
また、最近のスパイ活動は、コンピューターネットワークを利用したサイバー攻撃による情報窃取へと拡大している。
すなわち、サイバースパイ活動である。伝統的なスパイ活動への対処とともにサイバースパイ活動への対処も喫緊の課題である。
同様に、国家または社会の重要な基盤を機能不全に陥れるサイバーテロへの対処も喫緊の課題である。これらの課題については別の機会に述べてみたい。