英国のMI5のような防諜機関の創設

(1)全般

 防諜とは、敵国やテロ組織などによる情報収集、妨害、攬乱、破壊行為を阻止・破砕し、もって国策、政治、行政の円滑なる遂行を期するための活動である。

 今日の我が国の防諜活動は、警察庁(公安警察)、公安調査庁などが連携し、スパイやテロリストの摘発を行っている。

 防諜活動に限らず、インテリジェンス活動には、一般的な犯罪捜査とは異なる高度な専門知識と特殊技能が必要とされる。また、それらの活動を合法化するための法制化が必要である。

(2)オウム・サリン事件における防諜活動

 1995年3月20日、「世界で初めて発生した大規模な化学兵器による無差別テロ」と呼ばれる地下鉄サリン事件が発生した。地下鉄サリン事件と松本サリン事件の死者数は併せて22人である。

 オウム真理教は、山梨県上九一色村にサリンを大量製造するための大規模な施設を設けて、研究・開発および製造を行った。

 また、1993年12月には、東京を中心にサリン等を散布する準備としてロシアからヘリコプターを購入するなど、大規模な武装化を進めた。

 このように、オウム真理教は国家を転覆させるテロを起こそうとしていたのである。

 ではなぜ、警察はこのような国家の危機に関わる重大な兆候を察知できなかったのか。

 それは、警察が、オウム真理教に関する秘密情報を入手することができなかったからであると筆者は考える。

 秘密情報を入手する有効な方法は通信傍受である。当時は司法的通信傍受を含めて通信傍受が合法化されていなかった。

 また当時、仮に日本に防諜機関が存在しており、ロシアにおいて諜報活動を行っていれば、オウム真理教がロシアから自動小銃(AK-74)やヘリコプター(Mi-17)を入手したという重要な情報を入手できたかもしれない。

 いずれにしても、当時の状況では、警察がオウム真理教の危険な兆候を察知できなかったことも致し方ないと言える。

(3)防諜機関の創設

 残念ながら、オウム・サリン事件の教訓は生かされず、現在も防諜組織は整備されていない。

 筆者は、日本は海洋国家・立憲君主国・米国の同盟国であるなど類似点の多い英国のMI5(正式名称はSecurity Service:保安局)のような防諜組織を創設すべきであると考えている。

 MI5の概要については拙稿「地下鉄サリン事件から30年、日本のテロ対策はどれだけ進歩したのか」(2025年4月11日)を参照されたい。