インテリジェンスの定義

(1)全般

 軍事評論家の故・江畑謙介氏は、その著書『情報と国家』の中で、次のように述べている。

「誰でも情報は大切だというのだが、多くの場合“インフォメーション”と“インテリジェンス”とを混同している」

「これは、これらの英語に対する適訳を見出せていない日本語の貧弱さに理由の一端があると同時に、その日本語を使用している日本人の文化において、情報の大切さが本当に理解されていない証左であろう」

 江畑氏の指摘にも一理あるが、筆者は日本人が情報の大切さを理解していない、あるいは日本語の貧弱さよりも別の理由が重要だと思っている。

 今日の我々日本人が、戦前使用していた的確な日本語(諜報・防諜・謀略など)を意識的に排除しているか、あるいはそれらを知らないためではないかということである。

(2)日本政府の定義

 かつて、当時は衆議院議員だった鈴木宗男氏(現参議院議員)が、インテリジェンスの定義について国会質問したことがある。

 政府は、「インテリジェンスとは、一般に、知能、理知、英知、知性、理解力、情報、知的に加工・集約された情報等を意味するものと承知している」と回答した(出典:政府答弁書2006年3月28日)。

(3)米国政府の定義

 インテリジェンスは、合衆国法典第50編第3003条(50 U.S. Code § 300)において次のように定義されている。以下は、筆者の翻訳と原文である。

①「インテリジェンス」には、外国のインテリジェンスおよびカウンターインテリジェンスが含まれる。

(The term “intelligence” includes foreign intelligence and counterintelligence.)

②「外国のインテリジェンス」とは、外国政府もしくはその機関、外国組織もしくは外国勢力、または国際テロ活動の能力、意図若しくは活動に関する情報をいう。

(The term “foreign intelligence” means information relating to the capabilities, intentions, or activities of foreign governments or elements thereof, foreign organizations, or foreign persons, or international terrorist activities.)

③「カウンターインテリジェンス」とは、外国政府もしくはその機関、外国組織もしくは外国勢力、または国際テロリスト活動によってか、あるいはそれらに代わって実行されるスパイ活動、その他の諜報活動、破壊工作、または暗殺から「被防護体を(筆者挿入)」防護するために収集された情報および実施された活動をいう。

(The term “counterintelligence” means information gathered, and activities conducted, to protect against espionage, other intelligence activities, sabotage, or assassinations conducted by or on behalf of foreign governments or elements thereof, foreign organizations, or foreign persons, or international terrorist activities.)

(4)筆者の定義

 米中央情報局(CIA)が作成し、1994年に米国のダイアン出版社が出版した「消費者のためのインテリジェンスガイド:A Consumer’s Guide to Intelligence」には次のように定義されている。

 以下は、筆者の翻訳と原文である。

 簡潔に言えば、インテリジェンスとは、私たちを取り巻く世界に関する知識と予見であり、米国の政策立案者による意思決定と行動の前提となるものである。

(Reduced to its simplest terms, intelligence is knowledge and foreknowledge of the world around us-the prelude to decision and action by US policymakers.)

  上記の定義を下敷きに筆者なりに定義すると、インテリジェンスとは、「相手国(または相手)に関する知識と予見であり、政策立案者の意志決定と行動の前提となるものである」と定義できる。