今回の判決が韓国軍に与える影響
今回の判決は軍の統治構造に複数の影響を及ぼす可能性がある。
李在明政権の誕生や「12・3非常戒厳」の発生に北朝鮮の対韓工作がどの程度寄与したかは明確でないが、結果として以下の事実は北朝鮮が期待する成果と合致していると考えられる。
1. クーデターの制度的封印
組織的抑止、監視体制、国際環境の変化に加え、司法が政権による軍への政治介入を違法化したことにより、軍の政治介入の余地は制度的に縮小している。
したがって、現状では軍事政権が再び成立する蓋然性は大幅に低下していると評価できる。
2. 政権交代による軍の揺れ
韓国軍は伝統的に保守的だが、左派政権は対北融和を、保守政権は対北強硬を志向するため、政権交代のたびに対北政策と軍人事が大きく変動する。
今回の判決は、こうした左右の政策差による揺れをさらに拡大する可能性がある。
3. 文民統制の強化と課題
本判決は文民統制強化の象徴といえるが、政権による人事操作や治安出動の政治利用、情報・資金・象徴動員といった軍の政治的利用構造が存続する限り、軍の中立性と専門性は維持されず、真の文民統制とは言えない。
軍の専門性より政治的忠誠が優先される危険性は依然として残る。
4. 北朝鮮への対抗力の維持
北朝鮮がミサイル・無人機・サイバー戦力を拡大する中で、軍の政治化は士気や専門性、即応力に具体的な損害を与える。
人事が政権の意向で左右されると、優秀な人材の流出や職務遂行への忖度が生じ、訓練の質や部隊の統制が低下する。
加えて、装備調達や予算配分が政治的取引の対象となれば近代化が遅延し、情報・サイバー防衛や無人機運用といった重要分野の能力が脆弱化する。
判決は政治化抑制の契機となり得るが、政権が軍を自陣営化しようとすれば、これらの損傷は深化し、対北抑止力の低下を招きかねない。