ロシアの地政学リスクが再び上昇
ホルムズ海峡を封鎖すれば、イラン自身も原油を輸出できなくなるからだ。
ただ、米国とイランのつばぜり合いが激化するリスクは存在する。イエメン沖のバブ・エル・マンデブ海峡のように、原油タンカーがホルムズ海峡を通過しづらくなってしまうかもしれない。原油価格は高騰し、100ドル超えも視野に入ってくると言わざるを得ない。
「トランプ米大統領はイランとの協議を優先する」との論調が出ているものの、予断を許さない状況のままだ。原油価格の下値が堅い状況が続くだろう。
筆者が注目するのは、市場が再びロシアの地政学リスクを意識し始めていることだ。
米投資企業カーライル・グループのジェフ・カリー最高戦略責任者は9日「原油価格に大きな上昇余地がある」との見解を示した。「世界の原油市場が供給過剰だ」との認識が広がっている中、カリー氏は「制裁対象であるロシア産原油が大量に洋上で滞留しているため、供給過剰とは言えなくなっている」と主張する。
ロイターは8日「インドの石油企業は(米国政府の制裁を恐れて)4月渡しのロシア産原油購入を回避している」と報じた。インドが購入を拒否したロシア産原油を安値で中国が購入する状態となっているが、中国の吸収能力にも限界がある。
米欧の制裁がさらに強化されれば、ロシア産原油の世界市場での販売はさらに減少する可能性は十分にある。そうなれば、世界の原油市場のバランスは変わり、カリー氏が主張するように供給過剰ではなってしまうかもしれない。
原油価格は足元の状況よりも市場のセンチメントの変化に左右されることが多い。
イランに加え、ロシアの地政学リスクの今後の動向についても、引き続き高い関心をもって注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。