ラスベガス・コンベンション・センターのセントラルとノースをつなぐリニューアルされたCES2026会場のエントランス部分。会場内のホールを地下トンネルで結ぶ「テスラループ」の地上ステーションも新たに設置された(著者撮影)
- 「AIはどこでも、誰にでも──そして、その先へ」
- 変化した基調講演の建て付け、「テクノロジーナラティブ」による「戦略的Offering」
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(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役、法政大学大学院客員教授)
「AIはどこでも、誰にでも──そして、その先へ」
生成AIの導入でデジタルヘルス、スマートホームやエンタメ領域への活用が進み、人々の暮らしが便利で楽しくなるとともに、AIエージェント導入による生産性の向上により企業のビジネスや従業員の働き方もダイナミックに変わる。
さらにAIがソフトウエアの世界だけでなく、現実世界(フィジカル空間)で“行動する主体”になる「フィジカルAI」の進化によって、人型ロボットの開発と実装、完全自動運転の実現、工場や倉庫のオペレーション革命、建設機器・農業機械の自動化のペースも一段と早まっていく──。
世界最大規模の最先端テックの祭典「CES2026」は年明けの1月4~5日のプレス向けメディアデーを皮切りに、1月6日から9日までの4日間の会期で、世界中から4100社の企業、14万8000人の来場者を集めて米国ラスベガスで開催された。
著者は今回もメディアの立場でCESに参加し、「デジタル×顧客体験(CX)」の視点で取材を行った。CESという巨大イベントを読み解く上で極めて重要な意味を持つ1月6~7日の基調講演(キーノート)の内容を中心に、CES2026で何が議論されたかをレポートする。
変化した基調講演の建て付け、「テクノロジーナラティブ」による「戦略的Offering」
シスコシステムCEO(当時)のジョン・チェンバースが「Disruption」(破壊的イノベーション)というバズワードを発して爪痕を残したCES2015を境に、ハードウエア(アナログ)中心の時代からソフトウエア(デジタル)中心の時代へと移行すると、CESの基調講演の建て付けも大きく変わった、というのが著者の見立てである。
以前のCESでは「バリュープロポジション」(価値提案)が基調講演の主要テーマであり、聴衆に自社が提供する価値が人々の暮らしをいかに便利でエキサイティングにするか、デモを通じ分かりやすく提示することが重要とされた。企業にしてみれば、株価対策や投資資金を集めるための、明日の成長のための「期待値づくり」がCESで基調講演のステージに立つことで得られる最大の「果実」だったわけである。
しかしながら、ここ最近では約1時間の基調講演で、
まず冒頭で自社の理念(パーパス)を起点にして最先端テクノロジーの実装によりどのような「世界観」を創っていくのかを明確に提示する「テクノロジーナラティブ」が語られ、
先述の「バリュープロポジション」(価値提案)を真ん中に挟み、
どんなタイプの共創パートナーと組んでエコシステムを構築し、鮮度(尖度)ある価値提案を実現したいと考えているのかを明確にした上で、公に提携のオファーを行う「戦略的Offering」で締めくくる──、
という建て付けが顕著になってきたように強く感じる(図1)。
