豊臣兄弟が生まれ育った尾張・中村(名古屋市の中村公園豊国神社灯篭、写真:Hiromi/イメージマート)
2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』がいよいよスタートした。主人公は仲野太賀演じる豊臣秀長で、天下人となる豊臣秀吉(演:池松壮亮)の弟である。秀吉の右腕として、秀長はどのように兄を支えたのだろうか。第1回「二匹の猿」では、日々懸命に働く豊臣秀長のもとに、家出して放浪していた兄の秀吉が突然現れて……。今回放送の見どころについて、『戦国最高のNo.2 豊臣秀長の人生と絆』の著者・真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
秀長らしい「もめごとの仲介」から物語がスタート
「むかしむかし、尾張の国の中村の地に、貧しくもたくましく生きる兄弟がおりました」
そんな安藤さくらのナレーションで幕開けとなった、2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。冒頭では、農民同士がもめて取っ組み合いを始めると、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長が登場する。この頃はまだ秀吉は「藤吉郎」、秀長は「小一郎」と呼ばれていたが、本稿では「秀吉」「秀長」で統一する。
ケンカしていた信吉と玄太の間に入って、秀長はこんな声をかけた。
「まあまあまあまあ、双方とも落ち着かんか。一体、何があったんじゃ」
聞けば、玄太は「そだ(粗朶:切り取った木の枝のこと)を盗もうとしたんじゃ」と信吉の盗みを糾弾し、信吉は「そっちが種もみを返さんからその代わりじゃ」と言い返した。玄太に貸した5升の種もみが返ってこないため、信吉が粗朶を持っていこうとして揉めているらしい。
双方に理解を示して「どっちの味方なんじゃ!」と責められた秀長は「わしは双方の味方じゃ」と返事。考えた末に「あと2升、玄太に貸してやれ」と意外な提案を信吉に行った。「ふざけるな! わしは取り返そうとしておるのじゃ!」と信吉が激高すると、こう真意を語った。
「お前のところは去年立て続けに二親を亡くしておろう。いくら種もみで苗を増やしても、人手が足らんかったら米は育たん。宝の持ち腐れじゃ。それに比べて、玄太のところは田んぼも広いし、若いもんも多い。種もみを貸して、その代わりに、とれた米の半分をもらえば、損はないじゃろう」
これには、双方も納得。仲直りして農作業に戻ることになった。
私が思い出したのは、映画『男はつらいよ』のオープニングだ。河川敷を歩いていた寅さん。転がってきたゴルフボールがカップインしそうになると、寅さんはその寸前で拾い上げて「いいってことよ」と言わんばかりの満面の笑みで、ゴルファーに投げ返す。そんなシーンがある。
ゴルファーからすれば「カップインするのに、何をしてくれるんだ!」と怒りたくもなるが、ゴルフのルールを知らない寅さんは「ボールが穴に落ちる」とむしろ好意で拾ってあげた、という状況である。
そんなシーンが主題歌とともに流れるのだが、「悪気はないのだが、何かと周囲を引っ掻き回す」という寅さんのキャラクターを短い場面で巧みに描写している。
『豊臣兄弟!』の冒頭シーンも、秀長の調和的な性格をよく表している。後年、秀吉が徳川家康と直接対決をした天正12(1584)年の「小牧・長久手の戦い」では、秀吉の甥・秀次が戦で失態をおかす。激怒する秀吉を秀長は必死になだめて、秀次をかばっている。
また、豊臣政権の窓口として、名立たる戦国大名と秀吉との間にも入った秀長。農民同士のいさかいをうまく収めたように、これからも互いの利害を調節しながら、エキセントリックな秀吉の暴走を抑える役割も担っていくのだろう。
「理想のナンバー2」とも評される秀長。いかにも彼らしい、もめごとの仲介から『豊臣兄弟!』の物語が始まることになった。