絶対エースの圧倒的な破壊力

 原監督は「1時間7分50秒」という高い目標をエースに課していたが、黒田の記録は1時間7分16秒。これは「山の名探偵」も“解決”できないほどの異次元なタイムだった。前回、青学大・若林宏樹がマークした1時間9分11秒の区間記録を一気に1分55秒も更新。区間2位の斎藤に2分12秒、区間10位の選手には4分44秒という大差をつけたのだ。

 駒大・藤田監督は、「区間記録からマイナス1分は覚悟していましたが、マイナス2分は想像もできなかったです」と素直に驚いていた。「68分くらい」という噂を聞いていた中大・藤原監督も「実力者の工藤君(1時間9分46秒の区間3位)でも2分半やられてしまう。あれだけ破壊的な走りをするクラッシャーみたいな選手が現れると、難しかったなというのは正直ありますね」と完敗を認めざるを得なかった。

 過去、「山の神」と呼ばれた選手は3人(順大・今井正人、東洋大・柏原竜二、青学大・神野大地)いた。彼らが走ったときと現在は距離(や一部コース)が異なるが、過去最速タイムは神野が3年時(15年)に樹立した1時間16分15秒だ。現コースに換算すると「1時間8分45秒前後」となる。

 黒田は過去最速タイムも1分半近く上回ったことになり、「山の神」をはるかに超える存在だった。彼は腕時計をつけずに自分の“感覚”でペースを刻む選手。区間記録ではなく、トップに立つことだけを意識していたからこそ、これだけのビッグレコードが誕生したのかもしれない。

 今季は主将としても“常勝軍団”を引っ張ってきた黒田。チームメイトに声をかけることもしてきたが、「走りで引っ張る」という“覚悟”がエースをさらに成長させた。

「レースだけでなく、練習でも必ず一番前で引っ張る姿を見せることを意識してきました。最後の箱根は、個人としては自分のところで首位を奪って往路優勝できましたし、5区で区間新という結果を残せたこともうれしく思っています。総合優勝できたので、チームのみんなに『ありがとう!』と言いたいです」

 最後は穏やかな表情が印象的だった。