いまや日本が技術を「盗む」立場に
まず中国と付き合ううえで必要なことは、冷静かつ多面的な現状分析と、それに基づく対応策の検討だろう。多面的な分析には、まずは接近しての「アリの眼」による分析、続いて俯瞰しての「鳥の眼」による分析、そして潮流から判断する「魚の眼」による分析が必要だ。日本では、「アリの眼」による分析が欠如しているきらいがある。
日本の自動車産業が中国勢に伍していくためにも多面的な分析は欠かせない。孫氏の兵法にある「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という考え方にもつながる。
中国のグーグルと言われる百度(バイドゥ)が開発したシステムが載る無人運転タクシーの室内。運転席のハンドルにはカバーがかけられていた(写真:2025年7月筆者撮影)
日本の自動車産業は90年代半ばから、中国企業との合弁会社設立により、技術を供与してきた一面がある。率直に言うが、そのプロセスで日本は技術を盗まれてきた面は否定できない。しかし、そのフェーズはもはや終わったに等しい。ものづくりのハード・ソフト両面で中国に先を越されつつある。
そうした現状を踏まえれば、今度は日本が盗み返す番ではないか。それくらいのしたたかさがないと、国際競争では負けてしまう。
中国企業は国際化を望む中で、日本市場にも関心を示している。法治国家の日本は制度の透明性が高いことが、中国企業が興味を示す一因らしい。大統領が変われば政策が大きく変わる米国とは対極にある、という意味も含まれる。
中国車に日本車が追い越される今、中国の悪口や批判を言って留飲を下げるのではなく、中国の強みと弱みを冷静に多面的に分析する必要がある。手を組めるところは組み、相手の進んだ部分から学ぶくらいの姿勢がないと、日本車は世界で存在感を失ってしまいかねない。
日本の保守系論客は「EVの時代など来ない」と声高に叫ぶ。しかし、自動運転などとの相性の良さから確実にEVシフトは進む。テスラが今展開している「FSD」と呼ばれる無人運転の技術は、人型ロボットの進化に繋がる。もはやEVは脱炭素の視点から求められているのではなく、クルマのスマート化の中で欠かせない流れになっている。この点も中国は進んでいる。
日本の自動車メーカーは世界の情勢を鑑みて、負けは負けと認める謙虚さと、反転のためにはこれまでの常識を否定するくらいのしたたかさが求められていると言えるだろう。





