日本を圧倒する巨大「ギガキャスト」メーカー
25年7月には、香港に本社を置き、世界最大の鋳造機メーカーと言われるLKテクノロジーホールディングスにも訪れた。同社の劉卓銘CEOは「日本人の記者を受け入れたのはおそらく初めてだと思います」と語った。
同社が注目を浴びたのは、EVで先行する米テスラが上海工場を建設後、20年から生産を始めた「モデルY」の車体軽量化に大きな貢献をしたからだ。その技術は「ギガキャスト」や「ギガプレス」と呼ばれる。車体の骨格の一部である床部分は数百の鉄のプレス部品を溶接して製造するのが主流だったが、鉄よりも軽いアルミ合金を溶かして巨大な金型で一体成型する技術のことだ。
LK製の巨大鋳造設備。さらにこれよりも巨大なものを製品化している(写真:2025年7月筆者撮影)
テスラが世界に先駆けてこの技術を導入し、それを担当したのがLKだった。LKは1979年、香港で劉CEOの父である劉相尚氏が創業した。最初は玩具や日用品などを作るための小型鋳造機メーカーだったが、08年にイタリアの大型鋳造機メーカー、イドラを買収したことなどにより業容を拡大してきた。
中国深セン郊外のBYDのサプライヤーパークがあるLKの最新鋭の工場にも訪れたが、日本では見たことのないような巨大設備が並んでいた。同社が製造する鋳造機は巨大だ。
これまで複数の部品で構成されている部分を一体成型するため、大きな金型が必要になる。この金型に溶けたアルミ合金を流し込み、瞬時に固めるために高い圧力をかけて押し出す。テスラが導入した初期は、圧力が4500トン程度だったが、LKはすでに1万6000トン級を商品化し、2万トン級の開発も進めている。
ちなみに6000トン級で鋳造機の大きさはおよそ縦20メートル、幅30メートル、高さ15メートルで、重さは100トン以上ある。鋳造機自体を車体工場に運ぶノウハウも重要になる。現在、日本国内では6000トン級以上の鋳造機を作ることができるメーカーは存在しないだろう。
LKは今後、欧州など世界市場への進出を強化する計画。劉CEOは筆者の取材に対してこう語った。
「世界でLKグループの存在感を高めていくことを大きな目標として掲げている。現在は中国向けが8割、海外向けが2割のところを今後5年から10年かけて海外向けを4割に高めていきたい。海外はサービスの拠点が中心だったが、今後は現地生産を強化していかなければならないと考えている」
こうした鋳造技術には、金型、材料、熱制御などのノウハウが求められる。日本はこうした領域で強かったはずだが、ここでも劣後し始めているのではないかと感じた。勢いでは完全に劣勢だ。