日本版トラスショックは英国を超える可能性
英国と日本の金融市場の構造が異なるため、日本でトラスショックは起きないという意見がある。そうした見方は楽観的であり、むしろ日本の場合、トラスショック以上にひどいショックが起きる危険性を抱えていると表現した方がいい。名目GDPとの対比で測れば、日本の公的債務残高は200%を超えており、英国の規模の2倍以上もある。
長期金利が急騰すれば国債費が急増し、国庫が窮する。この段階に至れば、新発債の発行などもはや無理である。企業や家計の資金繰りも悪化し、景気が急速に冷え込む。それを和らげようと日銀が国債を大量に購入すれば、円が暴落する。為替介入にも限界があるため、結局は円安に伴う物価高が加速し、国民は重いインフレ税を払うことになる。
日本は経常収支が黒字であるから英国のような惨劇は起きないという見解も論拠に乏しい。そもそも経常収支の黒字が歯止めになるなら、急速に国債や円が売られることはなかっただろう。高市政権はすでに厳しい状況にある状況に鑑み、英国よりも厳しいショックに見舞われる可能性を意識し、金融市場との対話に臨まなければならない。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です
【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。


