市場との対話を軽視した財政拡張の末路

 9月6日に発足したリズ・トラス元首相が率いる当時の保守党政権は同月23日、通称“ミニ予算”(mini budget)と呼ばれる補正予算を発表した。詳細は割愛するが、これは大型減税によって物価を押し下げるとともに、経済成長を促すことを志向するプランだった。ただ、代替財源を示さなかったため、市場に動揺が広がる事態となった。

 英政府の支払い能力に対する不信感を強めた投資家は英国債を投げ売りした。そのため英国の長期金利は、ミニ予算が発表された9月23日の長期金利は終値で3.822%と前日(3.489%)から0.333%ポイント上昇。そのわずか4営業日後に当たる27日には4.501%と、5日間で実に1%ポイントも長期金利が上昇する惨事となった。

政策金利と長期金利のスプレッド(英国のケース) (出所)イングランド銀行

 この金利の急騰と連動してポンド相場が急落。9月22日の終値である1ポンド=1.1257ドルから26日のザラ場では1.0384ドルまで下落した。株価も暴落し、いわゆるトリプル安が生じたため、与党・保守党の中からもミニ予算の撤回を求める圧力が高まり、トラス首相は最終的に予算を撤回、そして在任期間わずか49日で辞任した。

 後日談として、トラス元首相は金融市場の否定的な反応を想定していれば、減税には踏み込まなかったと証言しているが、一国の総理としてこの認識は甘いと言わざるを得ない。金融市場は、野放図な財政拡張に対しては必ず牙をむく。ゆえに、金融市場との対話が重要となる。投資家の信頼を得てこそ財政運営は持続可能となる。