親族外承継ならではの難しさは?

 一方、親族外承継にも特有の難しさがある。その要因となる特性をみていきたい。

 第1に、秘匿性があることである。譲り渡し側は後継者を探す段階では、企業名さえ明かさないのが主流である。そのため、幅広く情報を募りにくい。多くの場合は、少ない情報のなかから後継者候補や引き継ぎたい会社を探すことになる。

 第2に、情報の非対称性があることである。後継者は、企業の財務内容や従業員の能力などの内部情報を把握しづらい。一方で事業を譲渡する企業側は、後継者の経営能力や事業継続への熱意などを、完全に把握することはできない。できるだけ伝える努力をしても、情報の量と質には互いに差がある。

 第3に、選択肢は無数にあるのにそれぞれが一点ものであることである。同じ業種でも、商品・サービスの特徴や作業工程、経理処理の仕方など大小さまざまな違いがある。社風や勤務形態などの制度も一様ではない。

 第4に、人々の思いが強く影響することである。譲り渡し側の代表者は、長年経営してきた事業に対する強い思いがある。雇用を引き継いでほしいなど譲れない思いもあるだろう。そのほかの利害関係者も、立場によってさまざまな意見や思いがある。

 このような特性から、親族外承継にはいくつかの課題がある。後編では、それらの課題と、課題を乗り越え親族外承継を成功させるポイントを紹介する。

【後編へ続く】和菓子店を継いだ工場長に突如訪れた試練、長年一緒に働いた仲間は次々と離職…親族外への事業承継、成否分けるカギ

本連載で紹介する事例企業の詳細については、当研究所編『縁と絆が次世代に思いをつなぐ―親族外承継で成長する中小企業―』をご覧ください。 ~後継者の不在が課題となるなか、事業を継続するために、親族内から親族外に目を向けて後継者を探す企業が増えています。第三者に引き継がれ成長する12の中小企業の事例から、親族外承継の利点と課題、成功のポイントを考察しています。