批判しない、楯突かない―それが女の生き方なのか?

 横田知事とわたしは僭越ながら、幾つかの共通項がある。1970年代生まれの氷河期世代女性ということのほか、広島県生まれ、帰国子女、東京の大学に通った、など(なんなら霞が関で社会人生活をスタートしたというのも。わたしは官僚ではなく銀行員だったが)。だが、ジェンダー問題に関して見えているものや感じている課題感はまるで違うんだなあ、と痛感した。

 男性優位なホモソーシャル社会で多少の苦労や理不尽に直面しても、ジェンダーギャップの問題点については意見しない、批判しない。男性年長者には決して楯突かない。だからこそ、男性たちに担がれて、政治という男社会でリーダーになれるんだろうなあ……。その姿を見て、各方面で生きにくさに苛まれている女性たちは、マッチョな高市氏に対して抱いたそれとは違うモヤりをひしひしと感じているのではないだろうか。

「『女性初』ではあるけれど、私たちに見えている景色がいつも紅一点だから、『あれは男社会の名誉男性であるバリキャリ女性がたまたまそこに座っただけだよね』となってしまうんですよね」。ジェンダー問題に詳しい叡啓大学(広島市中区)の瀬古素子准教授は言う。

瀬古素子准教授(筆者撮影)

 問題提起をしつつ、社会を「耕す」ことをしなければ、いつまで経っても景色は変わらない。

「広島は昔から女子の大学進学率は比較的高い。だけど、こんなところで息をするのはつらいって女の子たちが出て行ってしまう。そんな土地ではダメなんだ、という認識を持たなければ」

 この先の女性知事の舵取りに、とはいえ、注目していきたい。