*写真はイメージです(写真:PantherMedia/イメージマート)
「マスメディア」「報道機関」「記者クラブメディア」…。20年弱、新聞社(全国紙)で勤務し、その後フリーランスの取材者となった自分が、かつて所属していた会社や業界のことに言及する際、きまってそういった表現をしてきた。世間がどんな言い方をしようが、「オールドメディア」という表現を自分から積極的には使ってこなかった。
ただ、ここ数日は、「オールドメディア」という表現で批判されることは免れないのではないか、と思い始めている。それには明確な理由がある。何かというと、読売新聞が朝刊1面トップで放った大誤報があまりにも衝撃的だったからだ。
いずれ発表されることを他社より早く書いて「特ダネ」
権力者からのリークをもらって、いずれ発表されることを半日、一秒でも早く報じる。それを「特ダネ」だの「独自」だの自称して報じる。誤報に至らないケースがほとんどとは言え、それは、読売新聞だけでなく、どこの社もやっていることだ。
新聞という業界は、そして事件報道(おそらく政治報道も)という世界は、私が新聞社に入社した23年前とまるで変わらない価値観や作法がいまだに蔓延っているのだな、と落胆した。マスメディアを取り巻く環境は、こんなにも変化しているというのに。
この件については、JBpressにおいても、日本大学危機管理学部教授の西田亮介氏や、元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏が論考を寄せている。なので、概要を説明するまでもないかとは思うが、最新情報も含めてざっとその後の経緯を振り返っておきたい。そして、「その世界」にそれなりの時間、身を置いてきた立場で、思うところを述べたい。
読売新聞は、8月27日朝刊1面トップで「公設秘書給与 不正受給か/維新衆院議員 東京地検捜査」の見出しで、日本維新の会の池下卓衆院議員の公設秘書が、勤務実態がないにもかかわらず国から不正に秘書給与を受給していた疑いで東京地検が捜査に乗り出したと報じた。他社には報道がない、いわゆる「特ダネ」だった。