トヨタ自動車社長から会長に就任する豊田章男氏(右)と、新社長となる佐藤恒治執行役員。写真は1月13日、「東京オートサロン」で撮影されたもの(写真:AP/アフロ)

 1月末、4月1日付でトヨタの社長が豊田章男氏から佐藤恒治氏に交代するというニュースが駆け巡った。「14年ぶりの社長交代」とか「13歳の若返り」とか「新社長は創業家ではなくエンジニア出身」とか、さまざまなニュース要素に満ちた話題で、ツイッターのトレンドにもしばらく上がっていた。

 だが、経済ジャーナリストでもなければトヨタユーザーでもないわたしにとっての最大のニュースは、まるで違うところにあった。

 それは、この発表が、記者会見ではなく、トヨタが自社で運営するオウンドメディアである「トヨタイムズ」でのYouTube生配信で行われた点にある。

 新聞報道とは、そしてジャーナリズムとは何か――。メディア環境が目まぐるしく変わるこの20年あまり、新聞社在職中から、そして辞めてからも、そんなことをひたすら考え続けているわたしにとって、それは衝撃的な、けれども考えてみれば必然の「事件」だった。

媒介者不要の時代…なのだろうか

「今まで公開されることのなかった、トヨタのありのままの姿をお見せするメディア」。トヨタイムズ公式ツイッターのプロフィール欄にはそうある。

 テレビCMなどと連動しながら、商品開発の舞台裏から経営者の思いまで、多様なコンテンツを動画も織り交ぜて頻繁にアップしており、企業活動を多角的に発信している。22万人超のフォロワー数は、一部地方紙の公式ツイッターアカウントのその数をはるかにしのぐ。

 ここでトヨタは社長人事を発表した。厳格に情報管理がなされたのか、どこかの社が「抜く」、つまり特ダネとして報じることなく、各社はほぼ同じタイミングでニュースを配信した。写真は、トヨタイムズ配信映像からのスクショだった。