古いジェンダー観への批判、あえて口にしようとしない横田知事

 広島では、小欄にも以前書いたが、人口の転出超過が4年連続で全国ワースト1で、若い世代、特に女性の流出が社会問題となっている。そんな土地で政治のトップに立つ人に、広島にはびこる古いジェンダー観を克服すべき課題として改善に取り組む姿勢を期待するのは当然のことだろう。

 現に、前任の湯崎氏は、全国の都道府県知事で初めて育休を取得して話題になり、先に示した家事時間ギャップのように「男性は仕事、女性は仕事と家事」となってしまっている女性活躍推進社会の現実を打破すべく、男性の家事育児を促して「共育て」を実現するための「男性活躍推進条例」の制定を目指した。だが、この条例案は男性が圧倒的多数を占める議会に上程することすら叶わなかった。

 そんな中でようやく誕生した女性知事。1日の就任会見でわたしは、ジェンダーギャップに関する認識を問うべく、霞が関で生きてきた中で女性であるが故に苦労した経験について、そして、女性活躍推進を阻むものが何か、県政にその問題意識をどう活かしたいか、といった質問をした。

初登庁日に開かれた横田知事の記者会見の様子(筆者撮影)

 返ってきた答えは、なかなかにぼんやりしたものだった。

「30年間国家公務員として働いてきたのでその中で思うことはたくさんある」「なかなか女性活躍の歩みが進みにくかったということは私も感じている」。苦労を匂わせる発言はあったが「ここでそれを理路整然と説明するのはなかなか難しい」と述べるに留め、具体的な経験も施策も結局明かさなかった。

 湯崎氏肝いりの男性活躍推進条例について他の記者が問うても、「条例に関してはいろいろな意見があるし、男性活躍というだけではないと思う」と歯切れが悪かった。