弾薬2万発が盗難、好調な防衛産業に冷や水

 ドイツ連邦議会(下院)は11月28日、2026会計年度(26年1~12月)の予算案を賛成多数で可決した。歳出規模は前年比4%増の5245億ユーロ(約95兆円)、そのうち国防費は1080億ユーロと冷戦終結後で最大規模となった。

 国防費拡大の流れに乗ってドイツの防衛産業が絶好調だ。

 ドイツ防衛最大手ラインメタルの弾薬などを生産する国内外の工場はフル稼働だ。同社の株式時価総額は今年に入り、3倍近く上昇している。

 だが、「好事魔多し」。ドイツ国防省は12月2日、軍に納入される予定だった約2万発分の弾薬が先週、民間の輸送車から盗まれたことを明らかにした。警察とともに弾薬の行方を調べているとしているが、極めて深刻な事態だと言わざるを得ない。ドイツ国内で大規模テロ事件が起きないことを祈るばかりだ。

 防衛産業の発展が経済成長に寄与する効果は小さいとの指摘も要注意だ。

 専門家によれば、国防費の乗数効果(投資当たりGDPがいくら増加するか)は1を下回ることが多い。このため、研究開発などに注力しなければ、国防費拡大の経済的メリットを十分に引き出すことはできない。

 国防費などを捻出する目的で国債が大量に発行されることになるが、ドイツの格付けが主要7カ国(G7)で最も高いことが幸いして海外投資家はこれを好感している。そのおかげで足元の国債利回りは安定的に推移している。だが、楽観はできない。

 経済効果が乏しいとなれば、ドイツ国債に関する評価は急変する可能性は十分にある。

 通貨ユーロの信認が揺らぐリスクもある。