ウクライナとの和平は実現するか。写真はロシアのプーチン大統領(写真:AP/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=57ドルから59ドルの間で推移している。「米国主導の和平協議が進展し、ロシア産原油の供給懸念が弱まる」との見方が広がり、原油価格は50ドル台後半で推移した。

 まず原油市場を巡る動きを確認しておきたい。

ウクライナ和平に期待

 ロシアのノバク副首相は11月25日、北京で開催された中ロビジネスフォーラムで、ロシア産原油の対中輸出拡大について中国側と協議していることを明らかにした。

 ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア産原油の主な輸出先は中国とインドだ。中国はロシア産原油を海上輸送で日量約140万バレル、陸上パイプライン経由で同約90万バレル輸入している。

 米国が10月にロシアの2大石油企業であるロスネフチとルクオイルに制裁を科したことを受けて、中国・インド向けの輸出について様々な報道が出ているが、ロシア全体の原油輸出は現時点で比較的安定している。

 だが、ロシア産原油の値引き幅は拡大しており、「ロシアの11月の原油・ガス収入は前年比35%減の5200億ルーブル(約1兆円)となる」とロイターは試算している。1~11月の収入も前年比22%減になる見込みだ。

 ルクオイルと同様、ロスネフチの経営も悪化しており、政府への株主配当が新型コロナウイルスのパンデミック初期の2020年以来の低水準になるとの分析が出ている。

 ロシア経済が疲弊していることもあり、「ウクライナとの和平に応じるのではないか」との期待が高まっている感がある。 

 トランプ米大統領は25日「(ロシアのウクライナ侵攻に関する米国の和平案についての両国の)相違点はわずかだ」とSNSに投稿した。ウクライナに要求していた27日までの和平案同意の期限は撤回したものの、来週、両国に高官を派遣して早期の合意を目指す構えをみせている。

 予断を許さない状況に変わりはないが、合意が成立すれば、市場からロシアプレミアムが剥落するのは確実だ。

 ロシア産をはじめ安値の原油を買いあさる中国の動きにも注目が集まっている。