きな臭いベネズエラ産原油をめぐる動き
ロイターは21日「中国は今年、インドネシアから大量の原油を輸入している」と報じた。中国政府の統計によれば、インドネシア産原油の昨年の輸入量は10万トン未満だったが、今年は10月までに981万トン輸入している。だが、この数字は怪しいと言わざるを得ない。インドネシア側の統計では中国向けの原油輸出量は2万5000トンに過ぎないからだ。
貿易業者らは「(この矛盾について)マレーシア発の積み荷検査が強化されたため、米国の制裁対象となっているイラン産原油をマレーシア沖で積み替える際にインドネシア産に偽装する手口が横行しているからだ」と説明している。実際、中国のマレーシア産原油の輸入量は3月の850万トンをピークに7月以降は半減している。
中国が購入を続けるベネズエラ産原油を巡る環境もきな臭くなりつつある。
米ニューヨークタイムズが「トランプ政権が検討する軍事作戦の選択肢に油田の制圧が含まれている」と報じた。米国がベネズエラに軍事的威圧を高める真の目的は、同国の石油権益の確保だとの憶測が浮上している。
背景には米石油業界の焦りがある。
シェール革命以前に建設された米国の製油所は硫黄分の多いベネズエラ産原油を処理できるよう設計されており、米石油大手シェブロンは同国に石油権益を有している。だが、自国政府のベネズエラへの制裁が足かせとなり、事業の拡大は難しい状況だ。
一方、反米のマドゥロ政権は原油を中国に大量に輸出しており、「石油権益が中国の手に渡ってしまう」との危機感が米石油業界内で強まっている。このため、反米政権を倒してベネズエラ産原油に容易にアクセスできる環境を整備してほしいというわけだ。
だが、ベネズエラの友好国であるロシアは米国の対応を「無法国家のふるまい」と非難しており、米ロ間の新たな火種となる可能性がある。