供給過剰懸念で大幅下落の可能性も
足元の原油価格は地政学リスクに下支えられているが、今後大幅に下落するとの見方が増えている。
JPモルガンは24日「原油価格は2027年までに1バレル=30ドル台に下落する可能性がある」との予測を発表した。世界の原油市場が2027年まで供給過剰の状態にあるというのがその理由だ。ゴールドマン・サックスも先週、同様の理由で「原油価格は来年、1バレル=52ドルに下落する」との見通しを示した。
原油価格下落の可能性が高まる中、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは30日、閣僚級会合を開催する。今回の会合の主目的は2027年の生産ベースライン(加盟各国に割り当てられる原油生産量の基準値)を決定する際の判断メカニズムを決定することだ。
OPECプラスはこれまで各国の原油生産量に関する要求を調整し妥協点を見つけ出すことに苦労してきた。この反省を踏まえ、OPECプラスはベースライン確定のプロセスを明確化したい意向だが、この試みが成功するかどうか定かではない。失敗に終われば、原油価格の下げ要因となる可能性は大いにある。
原油価格の下落は日本にとって望ましいが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。今後の動向について、最大限の関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
