サウジのムハンマド皇太子(左)は訪米しトランプ米大統領の夕食会に招かれた(写真:AP/アフロ)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=58ドルから61ドルの間で推移している。ロシア産原油の供給懸念から週初めに60ドル台に上昇したが、「ロシアとウクライナを巡る地政学が和らぐ」との観測が出ると58ドル台に低下した。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ロシア産原油の供給懸念
ロイターは11月16日「ロシア黒海沿岸の主要輸出拠点ノボロシースク港で、ウクライナの攻撃による被害で2日間停止していた原油の積み込みが再開された」と報じた。ノボロシースク港は14日、ウクライナ軍によるドローン(無人機)やミサイル攻撃で操業停止に追い込まれた。同港の原油輸出量が世界の原油供給の2%に相当する日量220万バレルであるため、原油価格は一時急上昇したが、操業再開の報道を受け、下げに転じた。
ロシア産原油の輸出の足かせはウクライナ軍の攻撃だけではない。
米財務省の外国資産管理室(OFAC)は17日「ロシア石油大手ロスネフチとルクオイルに対する制裁により同国の石油収入は既に減少しつつある」との分析結果を示した。
米国政府が10月22日に発表した両社への制裁は22日から発動されるが、インドや中国の石油企業は既に12月渡しのロシア産原油の購入を見送る意向を表明している。
ロイターが13日「ロシア産原油の海上経由輸出分の3分の1近くに相当する日量140万バレルがタンカーに積まれたままになっている」と報じたように、同700万バレル規模のロシアの原油輸出量が大幅に減少する可能性は排除できなくなっている。
買い手が見つからないロシア産原油価格は急落している。