中東で広がる「水クライシス」
イランの首都テヘランのモスクで14日、雨乞いの祈りが捧げられた。テヘランの今年の降水量は過去100年間で最低水準となっており、「住民の大規模な避難が必要になるのではないか」との憶測が流れている。専門家は「長年にわたる水資源の乱用のツケだ」と非難しており、問題の解決は容易ではない。
問題なのは水危機がイランにとどまらないことだ。
サウジアラビアでも国王が全土にイステイスカー(イスラム教の伝統的な雨乞いの儀式)を実施するよう要請した。UAEやクウェート、次期政権樹立に向けた協議が始まっているイラクでも同様の状況だ。
水問題の対応を誤れば、中東情勢が一気に流動化するおそれがある。日本の主要な原油輸入先である中東情勢について、これまで以上の関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
