世界の原油市場は供給過剰に

 ブルームバーグは17日「ロシアの代表的油種であるウラル原油価格は2年半ぶりの安値となった」と報じた。前述のノボロシースク港で取引されるウラル原油は13日に1バレル=36.61ドルとなり、ブレント原油に対するディスカント幅はバレル当たり23ドル以上に拡大している。

 窮地に追い込まれたロシア石油企業の海外資産の争奪戦も始まっている。

 世界最大級のプライベート・エクイティー企業である米カーライルや米石油大手エクソンモービルがルクオイルの海外資産取得に乗り出している。

 米国の制裁がロシアの石油産業に深刻な打撃を与えることは必至の情勢だが、原油価格の上昇傾向は続かず、一進一退の展開となっている。

 ロイターが19日「米国がウクライナに対して領土割譲を含むロシアとの戦闘終結案を受け入れるよう迫った」と報じると、「ロシア制裁が解除される」との憶測が流れ、「売り」が出た。

 筆者は「原油価格の上値が重いのは『原油市場が来年に向けて供給過剰になる』との認識が市場で広がっているからだ」と考えている。

 米ゴールドマン・サックス(GS)は17日「原油価格は来年、1バレル=53ドルに下落する」との予測を示した。世界の原油市場の供給過剰が日量200万バレルに達するというのがその理由だ。GSはさらに「ロシアの生産が急激に落ち込んでも原油価格は70ドル前後にとどまる」とみている。

 ロシアプレミアムが剥落しつつある中、中東情勢に動きがあった。