(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年7月26・27日付)
銀行に差し押さえられ売りに出された住宅(2008年12月18日、カリフォルニア州コロナ市で、写真:ロイター/アフロ)
世界金融危機の直前の2007年のこと。
後に不運に見舞われる米シティグループのチャック・プリンス最高経営責任者(CEO、当時)が本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「音楽が鳴り続けているうちは、立ち上がって踊らなければならない。我々はまだ踊っている」と語ったのは有名な話だ。
平易な言葉で言えば、ある資産クラスが急成長している時には、競争圧力が金融関係者にペダルをこぎ続けることを強いる。
たとえ彼らがバブルが弾けるのを恐れていたとしても、だ。
JPモルガンのCEOからの警鐘
これは今現在、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOの頭を悩ませている言葉かもしれない。
同氏はここ数カ月、プライベートクレジット(ファンドなどのノンバンクによる融資)に潜むリスクについて繰り返し警鐘を鳴らしてきた。
ボストン連銀の言葉を借りるなら、プライベートクレジットは「流星のような上昇」を遂げたことから、今や最も急速に成長する金融セクターの一つに数えられる。
ダイモン氏はプライベートクレジットには良い案件がかなりあるが、悪い案件も存在すると指摘した。
また、信用格付けはあまりにも信頼できないため、このセクターが「金融危機のレシピ」を作っていると言った。
「格付け機関からの評価を受けた数件のディールを見てみたところ、付与された格付けに衝撃を受けた」とし、「(世界金融危機の前の)住宅ローンを少し思い出させられる」と話した。
そして今月、ダイモン氏は一段と態度を強め、我々は「プライベートクレジットのピークを越えた」可能性があると語った。
だが、当のJPモルガンも今年、プライベートクレジットに配分する資産の規模を100億ドルから500億ドルへ引き上げている。
なぜか。ドナルド・トランプ米大統領がこの資産クラスを年金基金と個人投資家向けに開放しようとするなか、ライバルの金融大手がこの空間に殺到しているからだ。
金融の「ダンス」が激しくなっているのだ。