(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年7月24日付)
例外的な2人のジョルジャ・メローニ伊首相とエマニュエル・マクロン仏大統領(6月16日カナダのカナナスキスG7サミットで、写真:AP/アフロ)
大いなる例外は、米国ではなく欧州だ。国民国家で構成される世界にあって、欧州には欧州連合(EU)という超国家機関がある。
暴力は永久になくならないと理解されている世界にあって、そんなものは超越したと思うようになった(だからこそ今、当惑しながら再軍備を急いでいる)。
そして、年をとった政治指導者たちが率いる世界にあって、エマニュエル・マクロンやジョルジャ・メローニといった指導者が神童として一層目立つようになっている。
70代はざら、残された時間内にレガシーを確立する焦り
数字には唖然とするはずだ。
ドナルド・トランプ、習近平、ナレンドラ・モディ、ウラジーミル・プーチンは全員70歳代だ。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ、南アフリカのシリル・ラマポーザ、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバもそうだ。
イランでは、大統領が70歳で最高指導者は86歳になる。ナイジェリアとインドネシアの大統領はともに73歳だ。
つまり世界の人口の半分以上、そして領土の面積や軍事力で言えば大半がロナルド・レーガンの米国大統領就任時よりも高齢な男性の手中にある。
当時、その年齢ゆえに危うく見えたレーガンは69歳だった。
今日の世界を不安定にしている要因の一つは、その世界を統治する人々が高齢であることだ。
なぜか。
第1に、高齢の指導者には、時間切れになる前に自分のレガシー(政治的な遺産)、すなわち決定的な功績を残しておきたいという意識が働く。
中国本土と台湾の統一はそうした事業の一例だ。冷戦終結後に威厳と「戦略的深み」を失ったロシアによる復讐もそうだ。
その詳細がウクライナにとってどれほど不愉快なものになる恐れがあろうともウクライナで和解を成立させること、また、どんな経済的コストが生じようとも我々の知る世界貿易のあり方に終止符を打つことを急ぐトランプの態度も高齢者の焦りを示唆している。