(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年6月30日付)

「米国例外主義」の時代が終わろうとしていることについて語るのが突如流行りになっている。
その背景にはドナルド・トランプの政策とドル安、そして今年に入ってから1987年以来最大の差で米国株式市場が海外の競合市場をアンダーパフォームしているという事実がある。
しかし、驚きはワシントンと中東から次々放たれるショックにもかかわらず、米国株がまだじわじわ上昇していることだ。
爆発的に増加する債務にもかかわらず、米国債の価格も上昇している。
米国市場のパフォーマンスがそれほど例外的でなくなったのは、諸外国が上昇しているからであって、米国が下落しているからではない。
多くの人はこの底堅さを無意識の楽観主義として片づけ、米国株は間もなく2025年の「グルームサイクル」(嫌なニュースを絶えず見聞きすることで悲観的になる悪循環のこと)に屈すると主張する。
だが、筆者の経験では、評論家と市場のズレがこれほど大きい時は通常、市場から発せられるメッセージの方が正しい。
このため市場が何を感じ取っているのか考えてみる価値がある。
まだ実体経済に顕在化しないトランプ関税の影響
米国株はトランプの政策がまだ意味のある形で物価や経済成長に影響を与えていないことを示し続けている統計に基づき、歴史的に高いバリュエーション(株価評価)で推移しているようだ。
大きな恐怖は、ころころ変わるトランプ関税がインフレを高進させ、経済成長を鈍らせることだった。
ところがインフレ率はコンセンサス予想より低く、成長率は予想より高いままだ。
関税収入が米財務省の国庫に入り始めているものの、少々不可解な理由から消費者物価にはそれほど顕著に現れていない。
外国のサプライヤーがコストを吸収しているのか。それとも米国企業が手持ちの在庫を吐き出しているのだろうか。
いずれにしても、米国企業はまだ収益に大きな打撃を受けていない。
大方の予想はまだ、今年の下半期までに利益成長が(8%未満へ)減速し、インフレ率が(3%前後に)上昇し、国内総生産(GDP)成長率が(1.5%前後に)低下すると見ている。
だが、市場はこうした予想も一蹴している。