(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年6月25日付)

イランの地下核施設を爆破した「ミッドナイト・ハンマー」作戦に参加し、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地に帰還した「B-2」爆撃機(米空軍のサイトより)

 「12日戦争」には、どこか独特な響きがある。

 イランとイスラエル、米国との紛争にその名を授けることにより、ドナルド・トランプは2つのことをしている。

 まず、米国大統領は戦闘の決定的な終結を告げようとしている。

 次に、この12日間の戦争が中東の秩序を塗り替える瞬間になると示唆している。

 イスラエルがエジプトとシリア、ヨルダンを倒した1967年の6日戦争(第3次中東戦争)のように、だ。

停戦合意は守られるのか

 これらの主張は時の試練に耐えるだろうか。

 トランプが停戦を発表してから数時間で、イスラエルはイランが停戦協定に違反したと非難し、強力な対抗措置を誓った。

 これに対し、トランプは罵り言葉を使い、双方に手を引くよう指示した。

 停戦合意の「重大な違反」についてトランプがイスラエル政府にクギを刺したことは、イスラエルには細心の注意を払いながら接する米国の通常の傾向からの著しい逸脱だった。

 これにより、米政府とイスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフとの緊張関係が白日の下にさらされた。

 これは単にベルが鳴った後に2人のボクサーが最後のパンチを交わすようなものに過ぎず、最悪の戦いは本当に終わったのかもしれない。

 逆に、大文字で「PEACE(平和)」を謳ったトランプの宣言が希望的観測だった可能性もある。

 その場合、米国が中東情勢をコントロールできないことが再び浮き彫りになる。

 停戦は明らかに脆弱だが、紛争が今から収束する確かなシグナルではあるかもしれない。

 それでも、停戦はトランプが模索している決定的な新たなスタートよりは、イスラエルとイランの敵対関係の一時的な中断である公算が大きい。