(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年6月17日付)

戦争というものは予測不能だ。イスラエル人とイラン人でさえ現在の紛争がどう終わるのか知りようがない。
しかし、検討すべきアナロジーがいくつかある。
1つ目は1967年の6日戦争(第3次中東戦争)で、2つ目は2003年のイラク戦争だ。3つ目のシナリオは、イスラエルと西側諸国に反撃するためにイランが非伝統的な手段を使う新しいタイプの紛争だ。
この紛争は潜在的にテロリズムや大量破壊兵器さえもが使われるハイブリッド戦争に発展する可能性がある。
イスラエルのネタニヤフ政権としては1967年の再来を望むだろう。
あの戦争では、エジプト、シリア、ヨルダンに対する素早い勝利への準備として、イスラエルによる先制攻撃がエジプト空軍基地を破壊した。
イスラエルは間違いなく、今回の紛争の初期段階で急激かつ見事な成功を収めた。
だが、各地に施設が分散され、大部分が地下に存在するイランの核開発プログラムを破壊することは、地上の標的を破壊するよりもはるかに複雑だ。
特に米国の一部の評論家は、その結果として我々は2003年のイラク戦争の初期段階の再現を目の当たりにしていると危惧している。
あれもまた核拡散を防ぐために戦われた戦争とされており、その背景には体制転換を実現させる野望があった。
米国主導の有志連合軍が初期に成功を収めた後、イラク戦争は血みどろの泥沼と化した。
通常兵器の戦争ではイラン、イスラエル両国に限界
しかし、最も可能性が高いのはイスラエル・イラン戦争が独自の道筋をたどることだろう。
西側の安全保障当局者が心配している一つのシナリオは、切羽詰まったイランの体制が非伝統的な手段を使って反撃に出ることを決める展開だ。
あるベテラン政策立案者の言葉を借りると、「これがまだ第3次世界大戦に発展していない理由は、イランには伝統的なやり方で反撃する手段が非常に限られているように見えることだ」。
別の高官は、イスラエルは限られた「magazine depth(弾倉の深さ)」(専門用語を使わずに言えば武器の貯蔵量)しか持たないために、今の激しさで戦い続けるイスラエル政府の能力にも限界があると指摘する。
それでも、イランの体制が通常の紛争では大敗に向かうと考えたら、難しい選択を迫られる。
イランはおとなしく状況を受け入れ、交渉によって窮地から抜け出そうとするかもしれない。あるいは、非伝統的な手段によって事態をエスカレートさせる可能性もある。
イランは体制の存亡がかかった戦いに入っており、イラン国民と世界に対して強さを見せつける必要があると考えた場合、この節目が突破される可能性が高くなる。
激しい怒りと報復への願望も過小評価してはならない。