丁寧に言葉を受け止められた愛子さまの「傾聴力」
対照的に、看護師の小林さんの活動現場は、ラオス医療が抱える構造的な課題と直結している。ラオスの新生児死亡率は日本の20倍以上。インフラ・医薬品・教育の不足が重なり、低体重児や感染症の赤ちゃんが救われにくい環境が続いている。
「『小さく生まれたから仕方ない』という言葉が、現場では日常的に聞かれます。けれど本当は、救える命がたくさんある」(小林さん)
そのなかで小林さんは、新生児蘇生法の訓練や感染対策の啓発に取り組んできた。その成果として、出生時800グラムの双子が退院できたという、過去に前例のない快挙が生まれた。
この経験を懇談の場で伝えると、愛子さまは目を細めて深くうなずき、「ルアンパバーンのラオ・フレンズ小児病院を訪問した時に、新生児の死亡や事故が多いと聞きました。大切な活動をされていますね」と話されて、共感の思いをしっかり受け止めてくれたという。
「私が言葉に詰まっても、愛子さまは一つ一つに頷きながら聞いてくださって、『親身になって聞いてくださっている』と強く感じました」(小林さん)
ラオ・フレンズ小児病院を視察し、母親らに声をかけられる愛子さま(2025年11月20日、ラオス・ルアンプラバン)/写真:代表撮影・共同通信社
看護師の小林鈴夏さん(左から2番目)
また、愛子さまはラオス産ラム酒「ラオディー」を生産する、在留邦人の経営者との会話では、「ぜひお飲みください」との言葉に、「父と母にも伝えます」と話されていたという。皇室の方が“父と母”というごく自然なことばを使われたことに、小林さんは「温かいご家庭の様子が感じられて、親しみがわきました」と語った。
小林さんの職場でも、愛子さまご訪問の話題は続き、「美しいプリンセス」「伝統衣装の色が素敵」という声に加え、「日本語を学びたい」と口にする若者が増えたという。文化・外交・医療とは別の次元で、愛子さまの存在がラオス社会に“心理的な距離の近さ”をもたらしていた。