11月17日よりラオスを訪問される愛子さま(写真:工藤直通/アフロ)
(つげ のり子:放送作家、皇室ライター)
「陸に閉ざされた国」と呼ばれたラオスの今
戦後80年を迎えた今年、愛子さまの初の外国公式訪問地に決まったのは、東南アジアの内陸国ラオス。11月17~22日の6日間の日程で訪問される予定で、今年はちょうど日本とラオスの外交関係樹立70周年の節目にあたる。
ラオスは、ベトナム、カンボジア、タイ、中国、ミャンマーの5つの国に囲まれた、インドシナ半島の中央に位置する小国だが、その歩みは決して平坦ではなかった。
フランスによる植民地支配、ベトナム戦争期の米軍による未曾有の空爆、クーデターによる王政の終焉、そして社会主義国家の樹立──。激動の歴史を経たこの国には、今も戦火の記憶とともに、静かに祈りを捧げる人々の暮らしが息づいている。
愛子さまの6日間の旅は、複雑な歴史を抱えるインドシナ半島の象徴的な国家・ラオスを舞台に、「過去と未来」「戦争と平和」をつなぐ意義深いものとなるだろう。
日本が初めて国際協力機構(JICA)による「青年海外協力隊員」を派遣したのは、1965年のラオスだった。以来、道路整備や発電所建設、教育・医療など多岐にわたる分野で交流が続いてきた。
2014年には、日本貿易振興機構(JETRO)が首都ビエンチャンに事務所を開設。日本企業の進出や投資を後押しし、経済的な結びつきが一段と強まった。
ラオスの主要な道路として物流の動脈となっていた「ビエンチャン1号線」は、路面の劣化などにより交通に支障をきたしていたが、日本の支援で道路整備を行い、経済活動の活性化につながった。
ラオスの首都・ビエンチャンの町並み(筆者撮影)
また、首都近郊のナムグム第一水力発電所では、日本の協力によって発電ユニットの増設が行われ、タイやベトナムへの電力輸出を支える要となっている。
一時はコロナ禍で経済が停滞したが、2025年にラオスは実質GDP成長率3.5%が見込まれているという。
平均年齢25歳という若い国でもあり、今後の発展が期待されていることから、現在、ラオスには約160社の日系企業が進出中だ。2022年には日本との間で特定技能に関する覚書も締結され、多くのラオス人が日本で農業などの技能実習に従事している。
かつて“Land Locked Country(陸に閉ざされた国)”と呼ばれたラオスは、いまや“Land Linked Country(地域を結ぶ国)”を掲げ、東南アジアの物流・交流の要として新たな道を歩み始め、日本との人的かつ経済的交流も活発になっているのだ。