署名集め「危険運転致死傷罪」への訴因変更を勝ち取ったのに肝心の判決は…

 恵果さんが命を奪われたこの事件は、裁判の途中で「危険運転致死傷罪」(当時は最高懲役20年)となり、裁判員裁判になったことが大きく報じられました。しかし、最終的にどのような判決が確定したのか、その詳細はあまり知られていません。

 河本さんは語ります。

「当時、報道を見た方の多くは、被告にさぞ重い刑罰が下されたと思っておられるでしょう。でも、実際はそうではありませんでした。

 大阪地裁の飯島健太郎裁判長は、結果的に危険運転ではなく、『過失』と判断し、懲役3年半(360日の未決拘留含む)という判決を下しました。判決文には、『反射的な行為をした際の不注意によるもので、とりわけ悪質とまでは言えない』『被告人が運転しようとしていた距離も短いので、酒気帯び運転の中で悪質とまでは言えない』などと書かれていました。

 娘の命を馬鹿にされているようで、悔しく、悲しくてたまりませんでした。その上、『遺族感情は峻烈だが、事故は悪質ではない』と書かれたことで、SNS上では私たち遺族をただのクレーマーのように叩く人たちもいたのです」

裁判官から検察官に暗に圧力?

「裁判員に事実を直視してほしい」という被害者遺族の思いは、なぜ届かないのでしょうか。中には、「検察官が証拠調べ請求を怠っているからではないか?」という声もあるようです。

 しかし、今回のシンポジウムを主催した「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」事務局長兼代表代行の髙橋正人弁護士は、こう指摘します。

「実は、公判前整理手続きの段階で検察官は裁判官から、『証拠調べ請求しても、却下しますよ』と、暗にほのめかされているのです。だから、先に諦めてしまっている。ところが、この手続きは密室で行われているので、外からは見えづらい。

 それを逆手にとって、裁判所は、『検察官が取調べ請求をしないから出ていない』と言うのですが、実態は全く逆です。最高裁が各裁判所に出させないよう暗に指導しているとしか思えないのです。この問題を改善するには、こうした実態を押さえておく必要があります」