署名集めて「過失運転致死傷罪」から「危険運転致死傷罪」へ訴因変更を実現させたが

 以上の通り、今回、高村議員が行った質疑によって、法務省も現状の問題を把握していることが明らかになりました。しかし、刑事裁判の目的を考えれば、裁判員の精神的負担を軽減することより、まずは証拠に基づいた「事実の認定」こそ重視されるべきだという強い意見があることも事実です。

「そもそも、『裁判員に配慮する』という言葉自体、犯人側にとって一番の特権になっているのではないでしょうか。被害者の遺体写真が刺激証拠? とんでもないことです。これを見ないで、何が分かるというのでしょう」

 厳しい口調でそう語るのは、10年前、飲酒逆走事件で娘の恵果さん(当時24)を失った母親の河本友紀さんです。

 看護師だった長女の河本恵果さんが、大阪市中央区のアメリカ村で命を奪われたのは、2015年5月11日のことでした。一方通行を逆走するかたちで駐車場から飛び出してきた加害車が、自転車で走行していた恵果さんに突然突っ込み、恵果さんは頭部を轢かれ死亡。恵果さんと一緒に自転車で走っていた友人の女性も腕を骨折する大けがを負いました。

夜が明けて撮影された凄惨な事故現場(遺族提供)

 自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で現行犯逮捕されたのは25歳の女でした。呼気からは、基準値を超える0.25mgのアルコールが検出されたといいます。

 河本さんは振り返ります。

「加害者は当初、『過失運転致死傷罪』で起訴されたのですが、泥酔状態での逆走という悪質さだったことから、私たちは納得できず、署名活動を行い検察に上申しました。その結果、裁判の途中で、『危険運転致死傷罪』に訴因変更され、公判は裁判員裁判で行われることになったのです」