日本の伝統文化を愛する気持ちは本物だった

 朝ドラ『ばけばけ』では、ヘブン先生が来日するやいなや、三味線の音を聞いて遊郭に足を運んだり、歓迎会の誘いを無視したりと、自由奔放ぶりを発揮。通訳の錦織友一がいつも振り回されて、思わず気の毒になってしまう。

 それでもどこか憎めないのは、ヘブン先生の日本文化への愛と探求心がひしひしと伝わってくるからだろう。相撲を見物したいがために、総理との約束をキャンセルしたチャップリンにも、まさに同じことが言えそうだ。

 実際のラフカディオ・ハーンもかなり気難しかったようだが、日本の伝統文化を愛する気持ちは本物で、西洋の真似ばかりする日本人の姿を見ては「なぜ西洋の真似をしますか?」といった違和感を抱いていた、とセツは回想している。

 チャップリンの関心を日本へと向かわせた、小泉八雲の『怪談』。ドラマではどんなふうに登場するのか。創作の背景がどう描かれるのかも楽しみである。

【参考文献】
『チャップリン自伝 若き日々』(チャールズ チャップリン著、中里京子訳、新潮文庫)
『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』(チャールズ チャップリン著、中里京子訳、新潮文庫)
『チャップリン 作品とその生涯』(大野裕之著、中公文庫)
『思ひ出の記』(小泉節子著、小泉八雲記念館監修、ハーベスト出版)
『セツと八雲』(小泉凡著、朝日新書)
『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版編、NHK出版)
『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(櫻庭由紀子著、内外出版社)