『怪談』に惹かれて来日を決意した「喜劇王」

 チャップリンといえば、チョビヒゲ、山高帽、だぶだぶのズボン、大きな靴、そして、ステッキがトレードマークとして知られている。

 そのうちのステッキは、なんと日本からの輸出工芸品で、滋賀県産の竹でできたもの。チャップリンはロサンゼルスのリトル・トーキョーで、このステッキを発見し、小道具として取り入れることにしたという。

 また、チャップリンは運転手として日本人の高野虎市(こうの とらいち)を採用している。当時、アメリカ西海岸では日本人排斥運動が行われている最中にもかかわらず、面接では相手の人種も尋ねずに、運転技術だけで採用を決定。実際に雇ってみると、期待以上の働きぶりだったのだろう。高野を秘書として雇い入れた。

 その後、チャップリンは使用人に日本人ばかりを採用。17人全員が日本人だったというから驚きである。

 そんなふうに何かと日本と縁が深かったチャップリン。彼が夢中になって読んだのが、小泉八雲の『怪談』である。

 日本への思いを募らせたのだろう。映画『街の灯』を完成させたチャップリンは1932年、1年半にもわたる世界旅行へと出かけることになるが、その際に日本も訪問することになった。