仕事時間の長短や残業の有無だけで決まるものではない
この考え方は、決して一国の首相に限った話ではありません。私たち一人一人にも当てはまります。例えば、受験生。かつては、4時間睡眠だと合格して5時間睡眠だと不合格になる「四当五落」などとも言われました。
しかし、4時間睡眠だったのだとしても自ら進んで選んだ道であり受験に合わせて生活もうまく回せているのであれば、それはそれでワークライフバランスは最適化されています。四当五落の生活がずっと続くのであれば別ですが、③にあるように人生の一定の時期に応じた生き方として尊重されてよいはずです。
同様に、出産や育児に集中したい人が育児休業を取得して仕事から離れ、子育てに全力を注ぐことを選ぶのも、その時期においての最適なワークライフバランスだと言えます。
大切なのは自らの意思による選択なのかどうかであり、「働いて、働いて、働いて」と仕事漬けだったとしても、それが本意なのであれば、ワークライフバランスはとれていることになります。
逆に、毎日定時で退社し家族全員がそろって夕飯を囲む生活はワークライフバランスがとれていると言えるのかというと、そうとは限りません。今就いている仕事が希望に沿ったものでなければ、①にあるようなやりがいや充実感は得られないでしょう。
また、希望の仕事に就いているとしても、上司からパワハラを受けているような環境であれば、職場で過ごす1分1秒がつらくて仕方ないはずです。家で過ごす時間も、家族関係が冷え込んでしまっているのであれば苦痛に感じられるかもしれません。
このように具体的な場面や状況をイメージして整理していくと、ワークライフバランスとは、単に仕事時間の長短や残業の有無で決まるものではないと分かります。重要なのは、自分の意思で働き方や生き方を選べているかどうか、そしてそれを実現するための選択肢が用意されているかどうかです。