ワークライフバランスをとるために欠かせない「3つの状態」
〈「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす」ことと、「家庭や地域生活などにおいて、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」こととが両立できない社会〉
こんな現実を課題視し、解決するために必要な取り組みがワークライフバランスということです。ワークライフバランスの実現によって目指す社会の状態は、定義の文言内容をさらに分解してみるとよりクリアになります。整理すると、以下の3つです。
①やりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす
②家庭や地域生活などにおいて多様な生き方が選択・実現できる
③子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる
つまりワークライフバランスとは、①~③が同時に成立するように調和を図ることだと言い換えることができます。やりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たせていたとしても、②や③が実現できていなければワークライフバランスがとれていることにはなりません。
逆に、家庭や地域生活および人生の各段階に応じて多様な生き方ができていたとしても、仕事上の責任を果たせていなかったり、働いてもやりがいや充実感が得られていなかったりすれば、やはりワークライフバランスがとれていることにはならないということです。
そう考えると、高市首相の「ワークライフバランスを捨てる」という発言は、①に全力を注ぐために②や③を考えない、あるいは当面の間は後回しにするといった意味だと解釈することができます。
しかし、いかに職務遂行に全振りしようとしても、完全に生活を捨てることなど現実的には不可能です。人は働きながらも食事をしたり睡眠をとったりゴミを出したりして、生活を営まなければなりません。ただ、1日24時間の中で家庭や地域生活にかける比率を必要最低限にとどめることはできます。そして、長い人生の中にはその比率でちょうど良い時期もあります。
今、人生において何がしたいのか、どう生きたいのかを考えた時に、仕事に最大限集中することをあえて選択したということなのであれば、①に全振りしたところで、決して②と③を否定したり捨てたりしたことにはならないはずです。
むしろ、①に全振りしながら②と③についても最適化できているのだとしたら、それはそれでワークライフバランスがとれているのだと思います。
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