富士山周辺で試乗したスバル「クロストレックS:HEV EX」(写真:筆者撮影)
まさか、そんなことになっているとは——。スバル「クロストレック」をじっくり長距離で試してみようと富士山周辺に出かけた。だがスバルは水面下で大きな戦略を準備していることが、後に分かった。アメリカで人気のスバルのブランド「ウィルダネス」。同社はこれをグローバル展開させることにし、クロストレックとフォレスター、それぞれのウィルダネス仕様を日本に導入する準備を始めている。今回の記事では、クロストレック S:HEVの長距離試乗で走行性能を確認することに加えて、ウィルダネス関連の事業戦略を考察する。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
スバルのクロストレックにしっかり乗っておこうと思い、本社から「クロストレックS:HEV EX」を借りた。
筆者は昨年夏、富士山麓のプライベートエリアで、ストロングハイブリッド(S:HEV)と既存のマイルドハイブリッドを搭載するクロストレックを乗り比べた(詳しくはこちら「スバルの次世代ハイブリッド「ストロング」は力強い!富士山麓の特設コースを走って実感した「マイルド」との違い」)。
S:HEVではモーター出力が大幅に拡大したことによる出足の良さや、サスペンションが良く動くことでの路面との接地性の高さが印象に残った。
年が明けてから、青森県の酸ヶ湯温泉周辺でクロストレックS:HEVを走らせた(詳しくはこちら「「雪国のスバル」の実力は?クロストレックS:HEVとレヴォーグ レイバックを豪雪の青森・酸ヶ湯温泉で徹底試乗」)。
印象は「ウソみたいにガンガン曲がる」というもの。2モーターとギア機構を併せ持つスバル独自設計のeアクスルの効果を体感できた。
その後「フォレスター」がフルモデルチェンジし、ハイブリッドグレードはS:HEVに統一され、クローズドエリア内の悪路や公道のワインディングなどで試乗してきた。
10月に入るとジャパンモビリティショー2025(10月30日〜11月9日)の開催が近くなり、出展する各メーカーの新型モデルやコンセプトモデルに関する情報が自動車業界を駆け巡るようになった。
そうした中、筆者は各社の事業戦略を把握するために経営幹部らと意見交換をしたり、現行車の試乗などを進めていた。クロストレックS:HEVの長距離試乗はその一環だ。