保守革命の基礎を築いた「第一のニューライト」

「第一のニューライト」は、1950年代から1960年代にかけて生まれた。ルーズベルト大統領のニューディール政策への反対から始まり、リベラルな福祉国家への対抗軸として保守主義を再定義し、レーガン政権へと続く保守革命の基礎を築いた。

 冷戦下において、反共産主義を旗印に市場の自由化や小さな政府を指向するリバタリアニズム(Libertarianism 自由至上主義)が台頭し、これが伝統的価値観や宗教を守ろうとする文化保守と結びついたのである。

 保守派の牙城であった『ナショナル・レビュー』誌を創刊した、作家でジャーナリストのウィリアム・F・バックリーの運動や、小さな政府を指向し、政府の市場介入に反対し、強硬な反共路線などを訴え、保守主義運動の先導者となったバリー・ゴールドウォーターの大統領選挙は、こうした潮流を象徴する出来事だった。

リベラルな価値観への反動で生まれた「第二のニューライト」

「第二のニューライト」は、1960年代から1970年代の社会変動、とりわけ公民権運動、フェミニズム、反戦運動、カウンターカルチャー(対抗文化)といったリベラルな価値観の拡大に対する反動として生まれた。

 ここでは、都市のエリート層に対抗する形で、地方や白人中間層を基盤とする草の根保守運動が力を持った。キリスト教右派やモラル・マジョリティといった宗教保守の団体が登場し、伝統的家族観や道徳秩序の回復を訴えるとともに、銃規制や人工妊娠中絶への反対を強く掲げた。

 こうした潮流は1970年代末から1980年代初頭にかけてレーガン大統領の政権基盤を支え、社会保守的な政策を前面に押し出す形で政治的影響力を拡大した。こうした文化戦争を通じて、「第二のニューライト」はアメリカ政治の右傾化を加速させる原動力となった。

 そして、今注目されているのが、2010年代以降、トランプ支持層を中心に台頭した「第三のニューライト」である。

リベラル・デモクラシーを批判する「第三のニューライト」

 これは従来の保守主義とは異なり、アメリカの本質とも言える、自由主義と民主主義の理念が融合したリベラル・デモクラシーそのものを批判の対象とし、国家や宗教、更にはテクノロジーを新たな価値軸として据え直す思想である。

 本書では、「第三のニューライト」を構成する多様な思想家群を、次のように分析している。