グーグルも陥るイノベーションのジレンマ

「イノベーションのジレンマ」はハーバード大学の故クレイトン・クリステンセン教授が提唱し、あまりに有名なので、ご存じの方も多いと思います。ウィキペディアを引用すると、イノベーションのジレンマとは「大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。

 また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまう」ということです。 特に、改善が得意でイノベーションが苦手な大手日本企業にぴったり当てはまると言われたものでした。

 ところが、あのグーグルさえもこのジレンマに陥った様子が、本書で紹介されています。AIチャットボットの基盤となるトランスフォーマーという技術はグーグルの社内プロジェクトから生まれたのですが、それをChatGPTのような破壊的イノベーションに活用することなく、グーグルの既存ビジネスであるオンライン広告の精度改善に使われただけだったというのです。

 以前、グーグルに勤めていた友人らからは、「グーグルでは、社会を変えるような大きなことを考えろといつもはっぱをかけられる」と聞いていたので、大企業病というのはグーグルのような組織にも巣を食うのかと驚きました。