最終種目の男子100mで栁田大輝が大金星

 大会のフィナーレを飾る男子100m決勝はサニブラン・アブデル・ハキーム(東レ)が「足の違和感」で欠場したが、21歳の栁田大輝(東洋大)が2万人の観衆を沸かせた。

 予選通過タイムが10秒20(+0.5)で“最下位”だった栁田は1レーン。2019年のドーハ世界陸上で金メダルを獲得したクリスチャン・コールマン(米国)、9秒93の自己ベストを持つクリスチャン・ミラー(米国)らを相手に「60mで決着をつける」と“前半勝負”に懸けていた。

 スタートのリアクションタイムは予選の0.152秒から決勝では最速となる0.114秒に短縮。真っ先に飛び出すと、トップを疾走して、最初にゴールへ駆け込んだ。強力な海外勢を抑えて、10秒06(+1.1)で連覇を達成した。

 2位はミラーで10秒08、3位はコールマンで10秒11。他の日本勢では井上直紀(早大)が10秒16で4位、桐生祥秀(日本生命)が10秒16で5位、灰玉平侑吾(順大)が10秒21で7位、守祐陽(大東大)が10秒24で8位だった。

「よくも悪くも左側に人がいなかった。周囲を気にせずに走れたのが良かったのかなと思います。予選はスタートがもたついてしまったんですけど、決勝は反応も良くて、ちゃんと飛び出せた。スタートさえうまく切られたら、最後まで転がるように走るかなと思っていたので、その通りになりましたね」

 1週間前の関東インカレは追い風参考ながら9秒95(+4.5)で駆け抜けており、その“感触”が残っていたのもプラスに作用した。

「関東インカレはスタートから風に押してもらって、いいスピード感でスタートを切る経験ができたんです。その後は疲労を抜く感じで、そんなに練習はやれていなかったんですけど、前日練習もいい飛び出しができていました。今日も頭の片隅に9秒台で走ったときの感じを思い浮かべながら走ったりしたので、先週のレースがいいピースになったのかなと思います」

 しかし、東京世界陸上の参加標準記録(10秒00)には届かず、今回のレースは「80点ぐらい」とジャッジした。「調子を合わせてスタートライン立てれば、9秒台は絶対に出ると思っています」と栁田。連覇を狙うアジア選手権(5月27~31日)で日本人5人目となる“9秒台”が見られるかもしれない。