沢村賞の基準、このままでいいのか
ここまで見てきたように、投手の分業の進展とともに完投数、登板数、投球回数、勝利数は減少する傾向にある。

この基準をすべて満たさなければいけないということではないが、7つとも満たした沢村賞投手は2018年の巨人、菅野智之を最後に出ていない。
そして昨年はここ5年で2度目の「該当者なし」となった。
しかし選考委員は基準を改めることなく、毎年、「完投を目指す投手が少なくなったことは嘆かわしい」という趣旨の発言をしている。
率直に言って、沢村賞の選考基準は、NPBの現実から乖離している。今や「先発完投」ではなく、6~7回程度を少ない自責点で投げる投手がエースであり、怪我、故障せずに長く活躍することが求められている。
「だったら、ふさわしい投手が出るまで、該当者なしでいいじゃないか」
という声もある。だとすれば、何のための「賞」なのか?
沢村賞のコンセプトは「沢村栄治みたいな投手を顕彰する」ことではなく「その時代、そのシーズンに一番活躍した投手」に与える賞のはずだ。
野球が変化すれば、記録の基準も当然変化するものだ。
MLBの「サイ・ヤング賞」と同様、NPBの「沢村賞」の選考も、時代に即して柔軟に変化すべきだ。おそらく泉下の沢村もそれを望んでいるのではないか。