「先発完投」はレア中のレアに
一方、MLBでは90年以降、投手起用がさらに劇的に変化した。
90年以降の10年刻みでの完投数の推移を見る。2020年は新型コロナ禍でショートシーズン(60試合制)だったので2021年とする。
1990年:4210試合 429完投 10.2%
2000年:4858試合 234完投 4.8%
2010年:4860試合 165完投 3.4%
2021年:4858試合 50完投 1.0%
30年で完投は10分の1以下に減少している。今や「先発完投」はレアな記録になっている。
MLBで投手の完投が激減したのは、1990年代に「投球数」と「肩肘の故障」の因果関係が明らかになったことが大きい。投手は、一定の投球数を超えて投げ続ければ故障のリスクが飛躍的に増大するのだ。
MLBでは先発投手の投球数、登板間隔は厳格に管理されるとともに、クローザーだけでなく中継ぎ投手の重要性も高まり、6回以降、中継ぎでリードしたまま次の投手につなぐと「ホールド」という数字が付くことになった。当初は「参考記録」として扱われていたが、1999年からは公式記録となった。
NPBでは、2005年からホールドが公式記録となった。NPBではホールド数+救援勝利を「ホールドポイント」とし、これが最多の投手を「最優秀救援中継ぎ」として表彰している。
NPBの1990年以降の10年刻みの完投数の推移は次の通りだ。
1990年:1566試合 436完投 27.8%
2000年:1624試合 180完投 11.1%
2010年:1728試合 130完投 7.5%
2021年:1716試合 50完投 2.9%
NPBでも「先発完投」は「レアな記録」になりつつある。日米ともに完投数だけでなく、登板数、投球回数も大幅に減少し、それに伴い勝利数も減っている。
NPBではかつては「20勝投手」が一流の基準とされたが、20勝投手は、2013年の楽天・田中将大(24勝)を最後に現れていない。
