2025年4月27日、日本学生陸上個人選手権、男子 5000m決勝で優勝した松井海斗(左)と2位の鈴木琉胤 写真/YUTAKA/アフロスポーツ

(スポーツライター:酒井 政人)

1年生と2年生が最後の直線勝負

 ワールドユニバーシティゲームズ(以下ユニバ)の代表選考を兼ねた日本学生個人選手権。男子5000mは“箱根駅伝未経験者“が表彰台を占めた。

 レースは鈴木琉胤(早大1)が先頭に立つと、2周目に平松享祐(青学大3)が前に出て、1000mを2分42秒で通過。2000mを過ぎて、先頭集団は4人に絞られる。3000mの通過は8分17秒で鈴木、宇田川瞬矢(青学大4)、大島史也(法大4)、松井海斗(東洋大2)の順で進んだ。

 4000mを前に宇田川と大島が引き離されて、残り2周は鈴木と松井の争いに。ラスト1周の鐘が鳴り、鈴木がペースを上げるも、松井は離れない。ふたりは最後の直線で大接戦を演じて、残り20mで松井が逆転。ともに大会記録(13分45秒20)を上回り、松井が13分44秒59の自己新Vを飾った。2位の鈴木が13分44秒83、3位は大島で13分56秒53だった。

 優勝した松井は、「本当は残り400mで仕掛ける予定だったんですけど、先に(鈴木に)仕掛けられて、残り200mでもう1回動かされて苦しいレースになりました。でも、1年生には負けられない、という気持ちもあったので、ラストスパートで差し切ることができて良かったです」と笑顔を見せた。しかし、ホームストレートの強い向かい風に記録を阻まれ、ユニバの日本代表派遣標準記録(13分40秒00)に届かず、「そこは悔しいですし、課題が残りました」と話した。

 ユニバ代表を逃したが、復活を期する松井にとって順調なシーズンインになったようだ。

「昨季は夏からカラダの状態が良くなくて、首(頚椎椎間板ヘルニア)の手術もしたんです。姿勢の改善をして、12月あたりから練習ができるようになり、良い状態まで持ってくることができました。今年は夏合宿で距離をしっかり踏んで、駅伝シーズンでもしっかり走れるようにしたいです」

 今年の箱根駅伝は5区に登録されたが、当日変更で欠場。チームは主力数人を欠く窮地を乗り越えて、20年連続シードを獲得した。

「走れずに悔しかったですけど、必死につないで9位を確保してくれました。今季はチームに恩返しができるようにという気持ちが強いです。トラックは関東インカレと全日本大学駅伝選考会でチームに貢献する走りをしたい。そして三大駅伝はすべてに出走して、箱根は区間賞を目標にやっていきたいと思います」

 昨年の関東インカレ1部5000mで1年生最上位の5位に食い込んだ松井が“鉄紺の新エース“に駆け上がる。