2025年4月25日、日本学生陸上個人選手権、男子10000m決勝で優勝した伊藤蒼唯 写真/YUTAKA/アフロスポーツ

(スポーツライター:酒井 政人)

伊藤がラスト1周で圧巻スパート

 日本学生個人選手権内でワールドユニバーシティゲームズ(以下ユニバ)代表選考会となる男子10000mが行われた。この種目のユニバ代表は最大3枠。レースは小池莉希(創価大3)が引っ張り、1000mを2分46秒で入るが、2000m過ぎで小池が下がり、ペースダウンする。4000m過ぎに小池が前に出て、5000mを14分43秒で通過した。

 6500m過ぎで小池が先頭を回避するも、残り6周で小池が再び前に出る。トップが目まぐるしく変わるなか、常に冷静だったのが伊藤蒼唯(駒大4)だ。

「何度か先頭に出るかたちになりましたが、先着されてゴールしたら意味がありません。周りを気にする余裕を持ちつつレースを進められたかなと思います」

 残り600mで野中恒亨(國學院大3)がペースアップするも、残り1周を前に伊藤のスピードが爆発。昨年の出雲駅伝4区で区間賞を奪われた野中を一気に引き離して、ゴールに駆け込んだ。

 優勝タイムは28分53秒75。2位は野中で28分57秒65、3位は石丸惇那(4年)で28分59秒05だった。終わってみれば、伊藤が野中に4秒近い差をつけて完勝した。

「日本学生ハーフマラソンは駒大勢がユニバ代表を手にすることができませんでした。今回3人出たので、誰かが代表を決めようと思っていたので、僕が一番を取れたのは凄くうれしいです。ロングスパートを狙っていた選手が多かったので、そこを警戒しつつ常に周りの選手をうかがいながらレースを進めることができました。ラストまでもつれたら勝ち切る自信はなかったんですけど、やってみたら意外と動いたのでホッとしています」

 伊藤は現在、大八木弘明総監督が指導するGgoatのメンバーとポイント練習をこなしており、「今年はかなり追い込んだ練習をやってきて、スピードがつきました。田澤(廉)さん、(鈴木)芽吹さん、篠原(倖太朗)さん、(佐藤)圭汰ら日本トップクラスの選手を間近に感じて練習できているので、気持ちの面でもかなりレベルアップできているかなと思います」と自身の“進化”を感じている。

 昨季の駅伝は全日本3区、箱根6区で活躍するも区間2位に終わっただけに、「駅伝でも今日のような勝ち切るレースをしたいですし、チームは三冠を掲げています。僕らの学年が中心となって、その目標を達成できるようにしていきたい」と話していた。