トランプ政権内の声は一つだけではない

 スコット・ベッセント米財務長官は「中国は高い関税水準が自国のビジネスにとって持続不可能だと理解するだろう。緊張緩和の後、原則合意が可能となる」と着地点を模索している。トランプ政権の問題は一つの声だけではない点だとランダー氏は指摘する。

関税については穏健派、スコット・ベッセント財務長官(中央。写真:AP/アフロ)

 ベッセント財務長官は日本、韓国、英国など多くの国の貿易担当者と会談しており、現在、貿易政策の主導権を握っているように見える。

 しかしピーター・ナバロ大統領上級顧問はトランプ氏の貿易政策の思想的指導者。カリフォルニア大学で20年以上教鞭をとり、保護貿易政策を主張してきた。ナバロ氏は第1次政権で大きな影響力を持ったが、ホワイトハウスで失脚。第2次政権ではまだ影響力を失っていない。

過激な保護貿易主義者ピーター・ナバロ大統領上級顧問(写真:ロイター/アフロ)

 3人目のプレイヤーはウォール街出身のラトニック商務長官で通商代表部を実質的に支配している。トランプ氏の最大主義的な関税戦略に100%賛同している。

ウォール街出身のハワード・ラトニック商務長官(写真:UPI/アフロ)

「製造業中心の経済に戻すための長期的な手段として関税を考える強硬派とベッセント財務長官に代表されるグローバル主義的なウォール街派との内部的な議論が進行中だ。後者は、関税は交渉ツールとして問題ないが、冷静さを失うべきではないと主張するだろう」(ランダー氏)