クルマと人との関係性の濃さは「AT車」の比ではない
印象的だったのはMT車のドライブはやはり楽しいということと、今どきのMT車はその楽しさを昔のクルマに比べてはるかにイージーに味わえるということだ。
MT車の運転操作がAT車に比べればはるかに煩雑なことは事実。走りはじめの発進加速からしてすでにそうだ。まず1速に入れてクラッチミートして発進。車速が上がるといちいちクラッチを切って2速、3速とシフトアップしていく。
クルーズ時もまったく操作が要らないわけではない。高速の登り坂で6速だとパワー不足と感じた時は5速にシフトダウンする必要がある。一般道でも前方を右左折しようとしているクルマがあれば、さらに4速、3速とシフトダウンして再加速に備える。
いかにも面倒くさそうな作業に思えるかもしれない。確かに最初はそう感じられるかもしれないが、MT車に乗り慣れるにつれて次第に意識しなくなっていく。人間が足で歩くときにいちいち“右足、左足…”と考えることがないように、MT車のクラッチ操作やシフト操作も感覚的に行うようになっていくのだ。
変速が無意識になるからといって、ドライブフィールがAT車と同じというわけではない。MT車の大半にはタコメーターが装備されているが、それを凝視して走るということはまずない。普段はギア選択が適切かどうかをエンジン音の高低や振動によって察知しながら運転する。
回転が高すぎるとノイズが高まるし、低すぎるとスナッチ(ガクガクとした動き)が出るのですぐに分かる。
変速機が自動的にシフトアップ、シフトダウンしてくれるわけではなく、ギアの選択はドライバー次第。サーキットを走ったり山岳路を快走したりする時だけでなく、普段からクルマの状態を常に感じながら走る。クルマと人との関係性の濃さはAT車の比ではない。
