2.トランプ仲介による停戦交渉の経緯

 本項は、停戦交渉の主要事象および停戦交渉に関連するトランプ氏の選挙の中の発言、就任後のトランプ氏の発言、トランプ政権の主要閣僚の発言などを各種報道に基づき取りまとめたものである。

(1)2023年5月10日:「私が大統領なら、24時間以内に終わらせる」

 2024年の米大統領選で返り咲きを目指していた共和党のトランプ氏は5月10日、米CNN主催のイベントにおいて、ロシアによるウクライナ侵攻について「私が大統領なら、24時間以内に終わらせる。勝ち負けではなく、どう決着をつけるかという問題だ。人が殺されるのを止めるのだ」と主張したが、ウクライナへの支持は明言しなかった。

(2)2025年1月7日:トランプ氏、ウクライナの戦闘終結について「6か月はほしい」

 トランプ氏は、フロリダ州で記者会見を開き、ロシアとウクライナの戦闘終結について「6か月はほしい。できればそれより早く終わらせたい」と語った。

(3)2025年2月12日:ヘグセス米国防長官の発言

 ピート・ヘグセス米国防長官は、ベルギー・ブリュッセルで開催された「ウクライナ防衛コンタクトグループ」で、「私たちも皆さんと同じように、主権と繁栄を持つウクライナを望んでいる」と話した。

 そのうえで、「しかし、ウクライナが2014年以前の国境に戻ることは非現実的な目標であることを認識しなければならない」「この幻想的な目標を追い求めることは、戦争を長引かせ、さらなる苦しみをもたらすだけだ」と述べた。

 また、ヘグセス氏は、「ウクライナのNATO加盟の可能性は小さい」と述べた。

(4)2025年2月12日:米露首脳電話会談

 トランプ大統領は2月12日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談したと発表し、ロシアとウクライナの戦闘の終結に向けて、交渉を始めることで合意したと明らかにした。

 またトランプ氏は、ウクライナが求めているNATOへの加盟について「現実的ではないと思う。ロシアはそんなことは許さないと言っていて、これは何年も続いている」と否定的な考えを示した。

 さらにウクライナがロシアによる一方的なクリミア併合などが行われた2014年よりも前の状態に領土を回復できるかどうかについて「可能性は低いように思われる」と述べた。

 他方、ロシアのペスコフ報道官は、2月12日、ロシアの記者団に対し、プーチン大統領と米国のトランプ大統領との電話会談では、ウクライナについても議論され、プーチン大統領は、紛争の根本原因に対処する必要があると主張したと述べた。

 今回、トランプ氏がプーチン氏と90分間にわたる友好的な電話会談を行ったというニュースに、欧州各国は愕然とさせられたと報じられている。

 2022年2月に始まったウクライナ侵攻以来、西側諸国とロシア大統領の対話は凍結されていたが、トランプ・プーチン会談でそれがいきなり終わった。

 欧州の指導者たちは、トランプ氏がウクライナでの和平合意を急ぐ中で、プーチンの立場をいっそう強くしたと見ている。

(5)2025年2月14日:バンス米副大統領、欧州の民主主義を痛烈に批判

 米国のJ・D・バンス副大統領は、ドイツ・ミュンヘンで開かれた安全保障会議で演説した。

 ミュンヘン安保会議では、バンス氏が、ウクライナでの戦争終結に向けた協議の可能性について言及するものと予想されていたが、バンス氏は演説の大半を欧州諸国への批判に費やした。

(6)2025年2月16日:トランプ氏、ウクライナ停戦を4月20日までに実現

 ブルームバーグは関係者の話として、トランプ政権側が欧州の当局者に対し、ウクライナの停戦をキリストの復活を祝う復活祭にあたる4月20日までに実現したいという意向を伝えていたと報じた。

 他方、ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニーロフ書記は3月31日、プーチン氏が5月9日の戦勝パレードまでの停戦を目指している可能性を指摘した。

(7)2025年2月16日:英国は軍隊をウクライナに派遣する「用意と意思がある」

 英国のキア・スターマー首相は、「必要ならば我が国の軍隊を地上に派遣する」ことで、ウクライナの安全保障の確保に貢献する用意があると表明した。

(8)2025年2月17日:欧州主要国首脳会議

 欧州主要国の首脳は、フランスのマクロン大統領の呼びかけで、パリで非公式の緊急会合を開き、トランプ政権が進めようとしているロシア・ウクライナの停戦交渉への対応を協議した。

 欧州側は、トランプ氏がウクライナとEUの頭越しにロシアと停戦交渉を進めることを懸念するとともに、米国依存を脱却して防衛費を増額するとともに、停戦合意成立後のウクライナへの平和維持軍派遣案などを巡り協議した。

(9)2025年2月18日:停戦交渉に向けた第1回米ロ高官協議

 ウクライナ戦争の停戦交渉に向けた米ロ高官協議がサウジアラビアの首都リヤドで行われた。

 同協議には、米側からルビオ国務長官や安全保障政策を担当するウォルツ大統領補佐官などが、またロシア側からは、ラブロフ外相や大統領府で外交政策を担当するウシャコフ補佐官らが出席した。

 米政府の発表によると、協議では停戦実現に向け、米ロで高官級のチームを新たに任命することで合意した。

 同協議は停戦交渉でなく、米ロ関係改善に向けた協議であった。

(10)2025年2月28日:トランプ氏とゼレンスキー氏の世紀の口論

 ホワイトハウスで対面したトランプ氏とゼレンスキー氏は、大統領執務室で記者団を前にした両首脳と政権関係者らは、外交姿勢などをめぐって激しく口論する事態になった。

 予定されていた共同記者会見と、鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名式は中止になり、トランプ氏はゼレンスキー氏にホワイトハウスを立ち去るよう告げた。

(11)2025年3月3日:スターマー英首相主催の欧州首脳会議

 スターマー英首相主催の欧州首脳会議には、18の国・機関のトップが集まり、ロシアの侵攻を受けるウクライナでの和平に向けた取り組みなどを協議した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領も参加した。

 会合後の記者会見でスターマー氏は、「私たちは今日、歴史の岐路に立っている」と主張。さらに、会合では次の4項目で合意に至ったとし、その内容を次のように説明した。

①ウクライナへの軍事支援を続け、ロシアに対して経済的圧力を強めていく。

②いかなる恒久和平もウクライナの主権と安全の確保が条件で、和平交渉にはウクライナが参加しなくてはならない。

③和平合意が成立した際には、ウクライナの防衛力を強化し、将来の侵略を阻止する。

④ウクライナでの合意を守り、平和を保証するために「有志連合」を発展させる。

 スターマー首相は、BBCとのインタビューで、有志連合は英国とフランスとその他「1、2か国」で構成される見通しが高いとし、「戦闘停止の計画」を同連合がウクライナと策定すると述べた。

(12)2025年3月2日:仏マクロン大統領、部分的停戦案を表明

 フランスのマクロン大統領は、「空域や海上、エネルギー関連のインフラ設備」を対象とした部分的な停戦案を明らかにした。

 英国のスターマー首相と協議した停戦案だという。仏紙フィガロが2日掲載したインタビューで語った。

(13)2025年3月3日:トランプ大統領、ウクライナへの軍事支援および情報の共有を一時停止

 ホワイトハウス高官は3月3日、NHKの取材に対し、トランプ大統領がウクライナへの軍事支援を一時停止するよう指示したことを明らかにした。

 また、ブルームバーグは国防総省の高官の話として、軍事支援の停止は、トランプ大統領がウクライナのリーダーが平和に対する誠実な決意を示したと判断するまで継続されるとしている。

(14)2025年3月15日:欧州首脳ら対ロ圧力継続で合意

 スターマー英首相は、ウクライナの停戦を巡り、欧州の主要国やウクライナなど約25か国・機関による首脳会合をオンラインで開催した。

 スターマー氏は会合でウクライナの持続的な平和実現の必要性を強調。各国首脳はロシアのプーチン大統領に和平交渉の席に着くよう圧力をかけ続けることで合意した。

(15)2025年3月5日:フランス、「核の傘」を欧州に拡大

 フランスのマクロン大統領は3月5日夜、テレビで演説を行い、ロシアの脅威が欧州に差し迫っているとして、「フランスの核の抑止力を欧州の同盟国などにも拡大することについて戦略的な議論を始める」と述べた。

 フランスの核兵器による抑止力、いわゆる「核の傘」を、欧州に拡大することについて、検討を始める考えを明らかにした。

(16)2025年3月5日:トランプ大統領「施政方針演説」、ゼレンスキー氏と関係改善

 トランプ大統領「施政方針演説」のなかで、ゼレンスキー大統領から書簡を受け取ったことを明らかにし「ウクライナは、鉱物資源や安全保障をめぐる合意についていつでも署名する用意があるということだ」と述べた。

 また、トランプ氏は「ゼレンスキー大統領が書簡を送ってくれたことを感謝している」と述べ謝意を示した。

 今回の書簡をきっかけに、関係の改善につながると見られている。

(17)2025年3月6日:EU特別首脳会議 127兆円規模の「欧州再軍備計画」大筋合意

 EU(欧州連合)は3月6日、特別首脳会議を開き、防衛力の強化のため、日本円にして127兆円規模の資金の確保を目指す計画について大筋で合意した。

 また、ウクライナの独立や主権に揺るぎない支持を表明し、軍事支援を強化していくことを、ハンガリーを除く加盟国で確認した。

 会議の後、記者会見したEUのアントニオ・コスタ大統領は「ウクライナの安全保障は欧州の安全保障の中核だ。欧州の防衛を強化する努力は、ウクライナにとっても利益となる」と述べた。

(18)2025年3月11日:米・ウクライナ高官会議:ウクライナ30日間の暫定停戦に合意・軍事支援と機密情報共有の再開

 米・ウクライナ高官会議がサウジアラビアの西部ジッダで行われた。

 米側からルビオ国務長官やウォルツ大統領補佐官、ウクライナ側からイェルマーク大統領府長官やシビハ外相、ウメロフ国防相が出席した。

 米国とウクライナは3月11日夜、共同声明を発表した。

 ウクライナは「即時かつ暫定的な30日の停戦」という米国の提案に同意し、米国は軍事支援と機密情報の共有を再開するとしている。

 ルビオ長官は共同声明発表後に記者団に対し「ボールは今やロシア側にある」とし、「トランプ大統領はこの戦争がすでに終わっていることを望んでいた。ロシアができるだけ早く『イエス』と答え、実質的な交渉という次の段階に進めることを望んでいる」と述べた。

(19)2025年3月13日:プーチン大統領、米の30日間停戦案を拒否

 ロシアのプーチン大統領は3月13日、記者会見で、30日間暫定停戦案については「敵対行為をやめるという提案には同意するが、停戦は長期的な平和につながり、危機の根本的な原因を取り除くものでなければならない」と述べ、十分ではないとの考えを示した。

 また、ウクライナ側が、停戦期間を武器の入手や動員に利用する可能性があると主張したうえで「まだ議論すべきことがある。米側と話す必要がある」と述べ、さらに協議が必要だとの考えを示した。

(20)2025年3月13日:トランプ大統領、ロシア側に停戦案受け入れ求める

 トランプ大統領は3月13日、ホワイトハウスで行われたNATOのマルク・ルッテ事務総長との会談の冒頭、記者団の取材に応じた。

 この中で米国が提案しているウクライナでの30日間の停戦を巡り、「ウクライナは完全な停戦に同意した。ロシアにも同じ対応を望んでいる」と述べて、ロシア側に停戦案を受け入れるよう、改めて求めた。

 一方、トランプ氏は停戦の実現に向けて「我々は、維持されるウクライナの領土や失われる領土など、最終的な合意の要素を話し合っている。そこには大きな発電所も関係している」と述べて、停戦後のウクライナの領土のあり方についても協議が進められていると明らかにした。

(21)2025年3月16日:オンラインによる欧州首脳会議

 欧州各国は米国が提示した30日間の停戦案の受け入れをロシアが遅らせているとして、受け入れに向けてウクライナへの軍事支援とロシアへの経済制裁を強化し、圧力をかけ続けることで合意した。

(22)2025年3月18日:米露首脳電話会議

 トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談を行い、ロシア側はウクライナのエネルギー施設などへの攻撃を停止することを受け入れたが、焦点となっていた「30日間の停戦」では合意に至らなかった。

 ロシア側の発表では、電話会談の中でトランプ氏は、ロシアとウクライナの双方がエネルギー施設への攻撃を30日間停止することを提案した。

 プーチン氏はこれを受け入れ、ロシア軍に対し、ウクライナのエネルギー施設への攻撃の中止を命じた。

 ただ、米国が提案し、ウクライナ側が受け入れる用意を示している全分野の30日間の停戦については合意に至らず、ロシア側は停戦の条件として、ウクライナへの軍事支援や軍事情報の提供を完全に停止することを求めたとしている。

 一方、ホワイトハウスは「黒海の海域での一時停戦や恒久的な和平に向け、中東で交渉を始めることで合意した」と発表している。

(23)2025年3月20日:英国でウクライナ停戦後の部隊派遣協議

 英国やフランスなど欧州を中心とする二十数か国の軍高官らが、ウクライナの恒久平和に向けた安全の保証などに関して協議する会合をロンドン郊外で開いた。

 会合では、英仏が主導する有志国連合による停戦後のウクライナへの平和維持部隊の派遣を軸とする支援計画の具体的な活動内容について話し合われた。

 英メディアによると、平和維持部隊の派遣は約3万人規模での調整が進められており、英仏を中心に複数の国が派兵の意向を示している。

 また、30か国以上が後方支援への参加を表明している。

(24)2025年3月20日:ロシアとウクライナ、エネルギー施設を互いに攻撃

 ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、3月18日、米国との間でエネルギー施設への30日間の攻撃停止に合意し、19日にはウクライナも合意した。

 しかし、双方とも相手国のエネルギー施設への攻撃を継続して、双方との相手が合意を守っていないと非難の応酬が続いている。

(25)2025年3月23、24日:米国は、ウクライナおよびロシアとサウジで相次ぎ協議

▲2025年3月23日:米ウクライナ、2度目の停戦協議

 ロシアの侵攻に関する米ウクライナの二国間の高官協議において、ウクライナは攻撃停止について、エネルギー施設だけではなく、鉄道や港湾といったインフラ施設も含まれるべきだと訴えた。

▲2025年3月24日:停戦めぐる米ロ協議、12時間に及ぶも結論出ず

 ウクライナ侵攻の停戦に向けた米国とロシアの実務者協議が3月24日、サウジアラビアで行われたが、協議内容の発表はなかった。

 協議は24日午前に始まり、黒海などでの限定的な停戦について議論したとみられる。

 少なくとも3度の休憩を挟んで12時間以上に及んだが、両国代表団は報道対応せずに会場を去っており、停戦条件などで調整が難航した可能性もある。

 トランプ大統領は3月24日、ホワイトハウスで記者団に「我々は今、領土や境界線について話している」と指摘し、停戦ラインや露軍が制圧したウクライナ領の扱いも協議中だと認めた。

(26)2025年3月25日;ロシア・ウクライナ、黒海での停戦で合意

 ホワイトハウスは3月25日、黒海における船舶の安全な航行確保でウクライナ、ロシア両国と個別に合意したと発表した。

 ロシア大統領府は、西側諸国が穀物と肥料の輸出に関連する制裁措置を解除することを条件に、黒海における安全な航行確保で合意したと発表した。

(27)2025年3月27日:プーチン大統領、「ウクライナ当局すべてが非合法」

 プーチン大統領は3月27日、北部ムルマンスク州で原子力潜水艦の乗組員と懇談した際、ゼレンスキー大統領の任期は昨年5月に切れているとした上で、「大統領が非合法なら、ウクライナ当局すべてが非合法だ」と主張した。

 また、ゼレンスキー政権は「非合法」かつ「ネオナチ」だとして、「どう彼らと交渉するべきなのか、疑問がある」と述べ、交渉相手として認められないとの認識を改めて示した。

 その上で、「国連の支援のもと、ウクライナに暫定政府を設立する可能性について、米国などと話し合うことが可能だ」と述べ、暫定政府のもとで大統領選挙を実施し、その後の新政権と和平交渉を進める考えも示した。

(28)2025年3月30日:トランプ氏、プーチン発言に「非常に腹が立っている」と批判

 トランプ大統領は3月30日、NBCのインタビューに応じ、プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権の正統性を疑問視し、停戦交渉を長引かせようとしていると警戒心を隠さず、いら立ちをあらわにした。

 トランプ氏は「プーチンがゼレンスキーの信用性につけ込み、ウクライナの新たなリーダーシップを語り始めたことに非常に怒りが湧き、腹が立った」と批判。

 その上で、停戦合意が実現せずロシアに責任があると考えた場合、ロシアに対し1か月以内に制裁を科す考えを示した。

 ロシアから石油を購入すれば「米国でビジネスができなくなる」「すべての石油に25%から50%の関税をかける」と明言した。

 ただ、「正しい行いをすれば怒りはすぐに消える」とも語り、プーチン氏と週内に対話する方向で検討していると明らかにした。

 他方、ウクライナ議会は2025年2月25日、ゼレンスキー大統領の正統性について、国民や議会からは疑問視されていないとする声明を賛成268、反対0で採択した。

 大統領選については、「公正かつ持続可能な平和が確立され次第」実施するとしている。

 声明では「自由で透明性のある、民主的な選挙ができない責任はプーチン大統領にある」と記されている。

(29)2025年4月10日:米ロ、外交正常化を協議

 米国とロシアの代表団が4月10日、トルコの最大都市イスタンブールで、米ロの外交関係正常化に向けた協議を行った。

 トランプ米政権発足後の2月下旬に続く2回目で、米ロ間の接触が活発化している。米国務省によると、ウクライナ和平や安全保障問題はテーマとならなかった。

(30)2025年4月11日:ウィトコフ氏、ウクライナ東・南部4州の領有を認めるようトランプ大統領に進言

 ロイター通信は11日、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、帰国した米国のウィトコフ中東担当特使がウクライナ侵略の停戦交渉を進めるため、ロシアによるウクライナ東・南部4州の領有を認めるようトランプ大統領に進言したと報じた。

(31)2025年4月11日:欧州各国、ウクライナへ3兆4000億円超の新たな軍事支援

 ベルギーのNATO本部で、ウクライナへの支援について話し合う会合が開かれ、欧州各国は、合計210億ユーロ、日本円にして3兆4000億円を超える新たな軍事支援を表明した。

 会合には、欧州を中心におよそ50か国の国防相などが参加し、米国のヘグセス国防長官やウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで加わった。

 新たな軍事支援にはウクライナ側が強く求めている防空システムやレーダー、無人機などが含まれるという。

(32)2025年4月17日:ルビオ米国務長官、和平構想案を提示するも交渉仲介断念を示唆

 米国のルビオ国務長官は、フランスのマクロン大統領らとパリで会合を開き、ウクライナでの和平実現に向けた枠組みを提示した。

 会合には、ウクライナのイェルマーク大統領府長官、シビハ外相、ラミー英外相、ドイツのプレトナー首相補佐官が出席した。

 ルビオ氏は詳細には触れていないものの、枠組みが「好意的」に受け止められたと指摘。各国が合意に向けて取り組めば「和平は可能だ」と強調した。

 ルビオ氏は、マクロン氏らとの会合の後、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、ウクライナ戦争に関わるすべての当事者に対し、「恒久かつ永続的な和平の枠組み」を提示したことを伝えた。

 ロシア外務省によると、ラブロフ氏はルビオ氏に対し、ウクライナ紛争の長年の原因を取り除くため、米国と引き続き共同で取り組む用意があると伝えた。

 この和平構想案について、ブルームバーグは、恒久的な停戦が成立した際には、ロシアに対する経済制裁を緩和するとの内容も含まれている、現在、ロシアが占領しているウクライナの領土について、ロシアによる支配の継続を認める内容になっているほか、ウクライナが求めるNATOへの加盟も和平協議の対象から外される見通しだとしている。

 翌18日、ルビオ米国務長官は、パリを離れる前に記者団の取材に応じ、「ウクライナ戦争の終結が不可能なのであれば、我々は前へ進む必要がある」と発言。

「実現可能かどうかを迅速に判断する必要がある。私が言っているのは数日単位の話だ」と述べた。

 また、ルビオ氏は「これは我々の戦争ではない。始めたのは米国ではない。米国は過去3年間ウクライナを支援してきたし、終結を望んでいるが、これは我々の戦争ではない」とも述べた。

 また、ルビオ氏は「トランプ大統領は87日間にわたり、政権の最高レベルで戦争終結へ向けた努力を重ねてきた。今や実現可能かどうかを判断すべき時点にきている。我々が双方と接触しているのはそのためだ」と述べた。

(33)2025年4月18日、トランプ米大統領、和平仲介断念を示唆

 トランプ氏は、ロシアやウクライナが和平合意への到達を「とても難しくする」なら、アメリカはウクライナでの戦争をめぐる協議の仲介を「見送る」ことになると述べた。

 トランプ氏は大統領執務室で記者団に対し、自分は「具体的な日数」内での停戦実現を期待しているのではないが、「素早い」実現を望んでいると語った。