2.自国の空を守れないロシア
(1)ロシアの空を守る防空兵器はモスクワを除き「存在しない」
ロシアには、防空ミサイルシステムとして都市(遠距離)防空システム、中距離防空システム、戦場防空(短距離)システム(図1参照)、監視システムとして遠距離監視システム(図2参照)がある。
図1 ロシア軍の防空システムと防空範囲

ウクライナに向けられる遠距離監視システムは、図2のように配置されている。それらが、これまで、自爆型無人機により部分的に破壊された。
このことで、ウクライナの自爆型無人機の攻撃の早期発見ができなくなったようである。また、これらに連携して、防空兵器が作動していないようだ。
図2 ロシアの遠距離監視システムと監視範囲

ウクライナは現実に、ウクライナ国境から近い石油施設や空軍基地も、モスクワよりはるかに遠い施設も、自爆型無人機で攻撃して、成功させている。
ウクライナの自爆型無人機はセスナ機タイプに近いもので、映像を見ていると、高度は1000メートル以下、時速200~300キロで飛行する、比較的大きな自爆型無人機だ。
短距離ミサイル(ストレラやゲッコー)や射撃統制装置付き機関砲(例:パーンツィリ戦車)が配置されていれば、ほぼ、100%撃墜できるはずである。
機関砲であれば、3秒以内で撃墜できるものである。だが、撃墜できていない。
(2)自爆型無人機攻撃でロシアのエネルギー施設はやられっぱなし
トランプ・プーチン会談では、エネルギー施設への攻撃の停止だけが合意された。
この点についてだけロシアが合意したことには理由がある。
それは、ロシアがウクライナの無人機を撃墜できず、ロシアの石油関連施設が、大きなダメージを受けているからだ。
時速200~300キロで低速飛行するプロペラ推進の無人機を打ち落とせていないのだ。
なぜ撃墜できないのか。ロシアは、戦場とモスクワ以外の広大なロシアの領土にあるエネルギー施設に、防空ミサイルを配備できていない。
配備してあるのは、レーダーと射撃システムがない高射機関砲か、あっても命中させることができない機関砲だけなのである。
せいぜい1000発に1発命中すればいい方だ。だから、飛来する大半の無人機を打ち漏らしているのである。