スペイン絵画以外も見どころ満載

スペイン絵画の宝庫といえるサンディエゴ美術館。カリフォルニア州最南端の都市サンディエゴはスペイン人の入植によって築かれたという歴史があり、そのため美術館も積極的にスペイン絵画を収集してきた。ちなみにサンディエゴを拠点とし、ダルビッシュ有が所属するMLBチーム「サンディエゴ・パドレス」は、スペイン語で神父を意味する「Padre」がチーム名の由来だ。

とはいえ、展覧会の見どころはスペイン絵画だけではない。展覧会の冒頭ではイタリア・フィレンツェを中心に活動したジョット《父なる神と天使》とフラ・アンジェリコの《聖母子と聖人たち》を展示。さらに“サンディエゴのモナ・リザ”と呼ばれるジョルジョーネ《男性の肖像》、ヒエロニムス・ボス(の工房)《キリストの捕縛》など、ヴェネツィアの盛期ルネサンスと北方ルネサンスの作品が紹介され、ルネサンスの成り立ちや広がりを知ることができる。

左・マリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃 油彩/カンヴァス サンディエゴ美術館 ©️The San Diego Museum of Art
フランス絵画では、国立西洋美術館所蔵のマリー=ガブリエル・カペ《自画像》とサンディエゴ美術館所蔵のマリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》を並べて展示しているのが興味深い。2人の年齢は数年しか違わず、活躍した時期もほぼ同じだが、描かれた作品からは時代の移り変わりが見えてくる。
1783年頃に制作されたカペの《自画像》には「巻き髪に淡いブルーのリボン」というロココ時代特有の華やかさが見られるが、1799年頃制作のブノワ《婦人の肖像》は形態の美しさを簡潔に表そうとする新古典主義的傾向が強い。作品を比べることで、新たな気づきが得られる。
日本とアメリカ、2つの美術館のコレクションをまぜこぜにして見せるという、ユニークな展覧会。その大胆でいて実は緻密な構成にも、出品作の水準にも、心が踊らされた。
「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」
会期:開催中~2025年6月8日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:9:30~17:30(金、土は〜20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、5月7日(水)(ただし、3月24日(月)、5月5日(月・祝)、5月6日(火・休)は開館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)